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巨人・坂本勇人34歳に忍びよる影「あと何日間かください」原監督の”打診”ともう一つの選択肢「勇人を中心にしたチームだよ」
posted2022/07/09 11:01
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kiichi Matsumoto
宮本慎也は38歳、鳥谷敬は36歳だった。
近年の日本のプロ野球で名ショートとして鳴らした選手が、他のポジションへとコンバートされた年齢である。
宮本さんは2008年のシーズン中に当時の高田繁監督から三塁手転向を通達されたが、内心では反発する思いがあったという。
「まだショートでできるという自負はあったし、もちろんショートで勝負したい気持ちもあった。でもチーム方針だったから……僕が不満な態度を見せる訳にはいかないじゃないですか」
のちに本人から聞いた言葉だが、宮本さんらしい決着の付け方だった。
おそらく鳥谷さんも同じ思いを胸に、わずか10mほど離れた隣のポジションに立ったはずである。
そして宮本さんは本格的にコンバートされた2009年から4年連続で、鳥谷さんも三塁手として初めて臨んだ17年シーズンに、それぞれゴールデン・グラブ賞を受賞している。それはショートというポジションを離れても、宮本さんと鳥谷さんの守ることへの意地とこだわりの結果だったように映った。
野球という競技でバッテリーを除くと、最もハードなポジションは遊撃手であることに異存はないだろう。
もちろん動きの多さや細かいテクニックが必要な点では二塁手も双璧だが、ショートは一塁からの距離が二塁より遠い分だけ、スローイングの強さと正確さがより求められるポジションだ。
三遊間の深いゴロに追いついて、そこから反転して一塁に送球する。遊撃手の見せ場のプレーである。その華麗なプレーを成立させるためには、テクニックや強肩だけではなく圧倒的な下半身と体幹の強さが求められる。
だから下半身が衰え出す30代半ばになると、どんな名手もコンバートという声が聞こえ出し、そして実際にポジションを変わらざるを得ない状況へと追い込まれていくのである。