酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「殿堂入り級の三振王」中村剛也が偉大だから山川穂高も… 清原和博超え38歳おかわりさんが“ぽっちゃり野球少年”の夢なワケ
posted2022/07/09 11:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
「振りも振ったり20年」とでも言おうか、西武・中村剛也が清原和博を抜いて、歴代1位の1956三振を記録した。
このコラムで筆者は何度か中村剛也を取り上げてきた。チームの戦力均衡が進み、投打のタイトルホルダーが毎年のようにばらける最近のプロ野球界にあって王貞治(15回)、野村克也(9回)に次ぐ、6回の本塁打王を獲得し、歴代6位タイとなる4回の打点王を獲得した中村はすでにレジェンドと言ってよい。
中村剛也は「おかわりくん」という愛称で売り出したが、筆者は今や「おかわりさん」と敬意をもって呼ぶべきだと思っている。
中でも2011年に記録した48本塁打は超ド級の記録だ。この年、統一球を導入したNPBは、極端な投高打低になり、パの総本塁打数は前年の742本から454本と39%も減少したが、中村剛也はリーグの1割以上にあたる48本塁打を1人で打った。これはロッテのチーム本塁打数46本よりも多かった。昨年のパ・リーグ総本塁打数は689本だから、同じ比率だとすれば73本塁打を放った計算になる。
ただ長く現役を続けて三振を積み上げたわけではない
端的に言えば中村剛也は「スケールが大きい打者」なのだ。「本塁打のコスト」と言われる三振の分野で史上1位になるのも時間の問題ではあったが、その数字を見てみると「ただ長くやって三振数を積み上げた」だけではないことがわかる。
NPB歴代三振数10傑に1試合当たりの三振数の割合(K/G)をつけた。
※記録は7月8日時点。
1 中村剛也 1959三振(1916試合)K/G 1.02
2 清原和博 1955三振(2338試合)K/G 0.84
3 谷繁元信 1838三振(3021試合)K/G 0.61
4 山崎武司 1715三振(2249試合)K/G 0.76
5 秋山幸二 1712三振(2189試合)K/G 0.78
6 金本知憲 1703三振(2578試合)K/G 0.66
7 新井貴浩 1693三振(2383試合)K/G 0.71
8 中村紀洋 1691三振(2267試合)K/G 0.75
9 Tローズ 1655三振(1674試合)K/G 0.99
10 衣笠祥雄 1587三振(2677試合)K/G 0.59
中村は三振数歴代1位になっただけでなく、10傑では唯一1試合当たりの三振数(K/G)が「1」を超えている。つまり1試合に1個三振をしている計算になる。
他の選手は「長く試合に出続けているうちに三振も増えてきた」という側面があるが、中村は積極的にバットを振り続けてこの数字になったのだ。