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「私もアレックスも、無給で仕事をしているんですよ」三都主アレサンドロ44歳が“身銭を切って”ブラジルで追う夢とは〈本人に聞く〉 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byHiroaki Sawada

posted2022/07/03 11:04

「私もアレックスも、無給で仕事をしているんですよ」三都主アレサンドロ44歳が“身銭を切って”ブラジルで追う夢とは〈本人に聞く〉<Number Web> photograph by Hiroaki Sawada

三都主アレサンドロとご両親。ブラジルの地でセカンドキャリアを着実に歩んでいる

「そうだね。最大の問題は日本語。必死に勉強したよ。また、当時の明徳はスパルタ式で、ブラジルでは考えられないような厳格な指導もあった。サッカー部の上下関係も厳しかった。僕たちの代が3年になったとき、そういう上下関係はなくしたんだ」

――当時、明徳義塾のサッカー部はブラジル人監督を招聘し、あなたたちブラジル人留学生4人を入れて強化を図った。しかし、在校中の3年間、一度も全国大会に出場できませんでした。

「僕たちブラジル人留学生は、全員、『何が何でもプロになる』という意気込みだった。でも、チームメイトの多くはそうじゃなかった。僕は『それなら自分が2人分、3人分頑張ればいい』と思ってプレーしたんだけど、フットボールはチームスポーツ。なかなか勝てなかった」

――それでも、プロになれると思っていましたか?

「プロになるのを諦めたことは一度もない。なれるかどうか、ではなくて絶対になるんだ、といつも思っていた」

――その思いが実り、練習生を経て清水エスパルスに入団しました。ほどなくレギュラーとなり、1999年に史上最年少でJリーグMVPに輝きます」

「それまで自分がやってきたことが間違いじゃなかった、と思った。本当に嬉しかった」

突然、実家を訪れて両親に挨拶した理由とは

――この年、現在の妻・直美さんと出会い、交際を始めます。直美さんから聞いたのですが、ある日突然、彼女に何も知らせずに実家を訪れて両親に会い、「お嬢さんと真剣に交際しています」と伝えたそうですね。どうしてそんなことを?

「プロのスポーツ選手である自分が、彼女のご両親からどう思われているか、少し心配だった。そこで、直接お会いして自分のことを知ってもらい、2人が交際していることについての承諾を得たいと思ったからなんだ」

――でも、通常は交際相手にご両親と引き合わせてもらう、という形を取ると思います。なぜ自分一人で会ったのですか?

「これは僕と直美のご両親の問題だ、と思ったからだよ」

――もしご両親から直美さんとの交際を反対されたら、どうするつもりだったのですか?

「その場合は、交際をやめるつもりだった。ご両親が交際に反対だったら、将来、結婚もできないからね」

僕は、純粋に日本が大好きで

――これは、非常に勇気がいることだと思います。もしご両親から反対されたら、と考えてしまいますから。また、ブラジルは個人主義の国ですから、交際中の男女が互いの両親に交際相手を紹介するという習慣はありません。せいぜい、当人同士が結婚を決めてからだろうと思います。

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