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「私もアレックスも、無給で仕事をしているんですよ」三都主アレサンドロ44歳が“身銭を切って”ブラジルで追う夢とは〈本人に聞く〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2022/07/03 11:04
三都主アレサンドロとご両親。ブラジルの地でセカンドキャリアを着実に歩んでいる
「そうだね。でも、日本では少し違うと思ったんだ。日本にいて、ご両親は日本人なのだから、日本のやり方を最大限に尊重しようと思った」
――そして、日本国籍を取得したことについて。フットボールの世界では、ある国の選手が別の国の国籍を取り、その国の代表に招集されてW杯に出場することはしばしばあります。当時、『W杯に出たいがために日本国籍を取ろうとしている』と書いたメディアもありました。そのことについて、どう思いましたか?
「僕は、純粋に日本が大好きで、『日本人になりたい』と思って国籍を申請したんだ。『他の人が何を言おうと、自分には関係ない』と思っていた」
監督になることを諦めたわけじゃないけど
――1997年から2014年まで、ザルツブルク(オーストリア)に在籍した2007年を除く17年間、Jリーグの5クラブでプレーしました。加えて、2015年にブラジルへ戻ってきてさらに2年間プレーを続けました。
「両親は、僕がプロになってからほぼ毎年、日本へやって来て僕のクラブや代表でのプレーを見ていた。でもブラジルで、できれば地元のクラブでプレーするところを見てほしいと思ったんだ」
――そして、2016年に現役を引退し、この年の末、マリンガに三都主サッカーアカデミーを設立します。その理由は?
「いずれは監督になりたいと思い、日本でB級までのライセンスを取得した。監督になることを諦めたわけじゃないけど、『世界で通用する選手を育てたい』という別の夢があり、それを実現したいと思ったからだ」
――その後、愛知県の会社が母体となってプロクラブ・アルコが設立され、そのCEOを務めています。
「アカデミーはU-17まで。その先の受け皿としてプロクラブを作りたいと思い、日本のアルコの社長にそのことを説明してクラブの母体となってもらった」
――アカデミーにおける育成の成果は?
「現在、U-6からU-17まで300人を超える選手がいる。これまでにフラメンゴ、インテルナシオナル、アトレチコ・パラナエンセといった国内トップクラブなどのアカデミーに16人送り出しており、中にはすでにトップチームに上がって活躍している者もいる(注:20歳の長身CFロムロは、今年初め、アトレチコ・パラナネンセのトップチームに昇格。6月末までに21試合に出場して7得点3アシストを記録し、市場価格は200万ユーロ=約2億8000万円=とされている)。
アルコのトップチームにも、うちのアカデミー出身の選手が4人いる。アルコは彼らの保有権の一部を保持し、将来、彼らが他クラブへ移籍したらその一部を受け取れることになっている。」
――常時、日本人選手もいるようですね。
「昨年、U-16のチームの得点王となったCF杉浦響君が、今年はU-17でプレーする。また、野末虎之介君(15)もU-15に加わった。2人とも順調に成長しつつあり、今後が楽しみだ」
――アルコは、昨年、州3部から始めて最短の2季で州1部まで駆け上がりました。今後の運営方針は?