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古賀紗理那はなぜ「絶対ありえない」と語っていた“キャプテン”を引き受けたのか? バレー女子代表の新リーダーが明かす“葛藤の1カ月”
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/05/05 11:04
もうすぐ26歳となる古賀紗理那。眞鍋新監督が率いる代表チームでキャプテンを務めることになった
とはいえ、周囲はどうだろうか。おそらく「次のキャプテンは古賀紗理那だろう」と考える人が大半であったはずだ。事実、5年ぶりに日本代表の指揮を執る眞鍋政義監督も3月31日の代表登録選手発表会見で「キャプテンは彼女しかいないと思っていた」と断言した。結果的にキャプテン就任を引き受けたのだから「やっぱり」と納得されて当然なのだが、一度決めたら曲げずに貫く、頑固な彼女が、なぜ「ありえない」と語っていたキャプテンを引き受けたのか。
ストレートに問いかけると、堰を切ったように古賀の言葉が溢れた。
「自分自身のことだけを考えたら、東京(五輪)前のネーションズリーグの時点から、身体もメンタルもギリギリ、また次が考えられるかと言えば無理でした。それぐらい(その時出せるものは)全部出し切っていたし、同じようにはできない、(代表には)行けない、って思っていたんです。でも、もしパリオリンピックに日本代表が行けなかった時、自分がそのコートに立って、行けなかったという現実を突きつけられるよりも、自分が代表に選ばれているのに辞退して行かないほうが後悔すると思ったんです」
ハッとさせられた金子監督の言葉
日本代表登録選手が公に発表される前、2月初旬にはNECの金子隆行監督を通して今季の代表登録選手の中に古賀も含まれていることが本人にも告げられていた。その時点で選択肢は決して前向きなものではない。眞鍋監督が直々に話したいと言っている、と伝えられても「嫌です」と最初は逃げようとした。
だが金子監督の発した「行く、行かないではなく、日本代表に選んでもらっていることに対して感謝して、話ぐらいは聞きなさい」という言葉にハッとした。“日本代表”は行きたくないから行かない、と安易に決断するほど簡単ではなく、誰もが行きたいから行ける場所ではないと気づかされた。
「今までも(荒木)絵里香さんや竹下(佳江)さん、苦しい時代をずっと頑張ってくれてきた人たちがいるのに、自分はもう出し切ったから行きません、でいいのかな、と思ったんです。だから、今思えば、たぶんその頃から自分にずっと言い聞かせていました。『行かなくたって後悔しない、後悔しない』って。自分の中で、行かなくてもいいんだ、と正当化しようとしていました」