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古賀紗理那はなぜ「絶対ありえない」と語っていた“キャプテン”を引き受けたのか? バレー女子代表の新リーダーが明かす“葛藤の1カ月”
posted2022/05/05 11:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiichi Matsumoto
負ければ終わり、の最終戦で負けた。
4月3日。Vリーグ女子、V1レギュラーラウンド最終節。ファイナル3進出をかけたNECレッドロケッツ対久光スプリングスの一戦は、負けたら終わりの状況から破竹の勢いで勝利を重ねた久光が勝利した。
試合後に悔しさを滲ませ「隙があった」と繰り返した敗戦から数日しか経っていない。何から切り出そうか、と少し構えていたら、だがそんな思惑など杞憂に過ぎないとばかりに、悔しさよりもスッキリした表情で、ジャージ姿の古賀紗理那が現れた。
「負けたのは悔しいし、優勝できるチャンスを自分たちでつかめなかったことも悔しい。でも同じぐらい“そうなるよね”という思いもどこかにはあって。いい選手はたくさん揃っているし、やるべきことができればどこにも負けない自信もありました。だけど、最後に隙が出た。この結果になる準備しかできていなかったんだ、と冷静に受け止めることもできました」
冷静かつ的確に、自身の感じたこと、思いを次々言葉にして紡ぎだす。
2015年のNEC入社から2度、リーグ優勝を経験した当時のチームと現状の違い。
東京五輪での右足関節捻挫の影響もあり、序盤は満足なプレーができず、最後も目指す結果に届かなかった今季のVリーグ。
そして、今季の日本代表で“キャプテン”を引き受けた理由。
「絶対ありえないと思っていたし、自分には無理だと思っていました。そもそも私、来シーズン(2023年)のVリーグが終わったらもうバレーをやめようと決めていたから、行きたくないとか、行かないじゃなく、“行けない”って思っていました」
「向いてないのは自分が一番わかっている」
遡ること2カ月。シーズンが中盤から終盤へ差し掛かろうかという時期にも、同じく古賀の話を聞く機会に恵まれていた。
印象深かった1本のスパイクを軸に話を聞く中で溢れたのは、随所でにじませるリーダーシップや何度も繰り返す「チームが勝つために」という言葉。NECだけでなく、代表でキャプテンになる日もそう遠くないのではないか。そう話を向けると、食い気味に否定された。
「絶対無理です。そもそもキャプテンに向いていないのは自分が一番よくわかっているし、こんなワガママな選手じゃダメ(笑)。バレーはまだやめないですけど、これからは私も日本代表を応援する立場になります」
日本代表でもNECでも見せる姿は逞しく、頼もしくもあったが、その取材時に古賀が繰り返したのは「これから」に向けた自身の課題よりも「自分よりも周りに目が行く」「教えられることは何でも若い選手に伝えたい」ということだった。
冗談交じりとは程遠い、「行かない」という強い否定に少し驚きはしながらも、本気なんだろう、と納得もした。