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30歳Vリーガーが“離島の教師”に転身…エリート街道を歩んできた“守護神”がバレー部員10人と目指す春高「一回、連れてってあげたい」
posted2022/04/28 06:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Itaru Chiba
自分の手で花道を飾り、遠く離れた地で新たな挑戦をスタートしようとしているアスリートがいる。
4月17日に幕を閉じたバレーボールのV.LEAGUE DIVISION1男子で、2年連続9度目の優勝を果たしたサントリーサンバーズのリベロ・鶴田大樹だ。
今シーズン限りで現役を引退することが決まっていた鶴田は、ウルフドッグス名古屋と対戦したファイナルでも先発出場。山村宏太監督が「コートに立って、自分の手で優勝をつかみ取って引退するのが、彼にとって最高の花道」と話していたように、最後までスタメンを譲ることなく、有終の美を飾った。
鶴田は大学までアウトサイドヒッターだった。東福岡高校ではエースとして、春の高校バレーで初の決勝進出も果たしている。
だが177cmの身長で、Vリーグでスパイカーとして戦うのは厳しいと考え、リベロとして誘われたサントリーに入団し、転向。2017年には日本代表に選出されワールドリーグに出場した。
2019−20シーズンにVリーグでサーブレシーブ賞を獲得するなど、安定したサーブレシーブでもチームを支えたが、それよりも、数字に表れない、周りを生かすプレーや声にこだわった。
山村監督は何度も引き留めた
リベロとしてもっとも重視してきたのは、「当たり前のことを、高いレベルでやり続ける」ということだった。
「声を出すタイミングだったり、チャンスボールを返す質だったり、そういうところですね。自分が取る時の声なんて当たり前だし、周りもたぶん気がつかないと思うけど、その声のタイミングが少しでも遅れると、スパイカーの入りが遅れることもある。チャンスボールの質が悪かったら、スパイクが決まらなかったり、コート内が慌てた感じになったりする。だから一番こだわってきました。
そりゃあ、パンパンパス(サーブレシーブ)を返して、バンバンディグを上げたほうがカッコイイですけどね。でも僕がサントリーに入ってからの監督は、荻さん(荻野正二)も、山村さんも、僕のそういうところを見てくれたというか、そういうところをリベロに求めている監督だったからこそ、これだけ試合に出してもらえたのかなと思います」
まだ30歳。山村監督は何度も引き留めたという。
限界を感じての引退ではない。次の目標ができたから、新たな道に進むことを決めた。
4月末からは、島の先生になる。