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野球クロスロードBACK NUMBER
大阪桐蔭“ズルい・強すぎ”の声にOBは何を思う?「何から何まで徹底した」寮生活のリアル “普通の高校生”の自由と引き換えに…
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/05/06 11:03
大阪桐蔭はなぜ強いのか? そのヒントを探るべく、同校OBで、近江のエース・山田陽翔の兄でもある山田優太(日体大3年)に聞いた
「大阪桐蔭で野球をする以上は…」
――世間の評価が嫌ではなかったか。腹は立たなかったか?
今度は恬淡が窺えるような色はない。山田はしっかりと、言葉を編んだ。
「それは普通のことなのかな、と。大阪桐蔭で野球をする以上は、そういうことが条件としてあるのかなって。だから僕らも、真剣に『日本一のチームになろう』と常日頃から話して、練習から手を抜かずに野球に打ち込めたんだと思っています」
山田はそれを、大阪桐蔭の「伝統」と言った。力の有無は関係ない。優勝候補ともてはやされても足元を見失うことなく春夏連覇を遂げた18年の世代も、監督から「力不足」と言われスタートした現世代も同じである。
今年のセンバツを制した直後、キャプテン・星子天真の言葉が、そのことを表しているような気がした。
「自分たちの代は、上の代に食い込んでいける選手が少なくて。だからこそ、『どこよりも日本一の練習をやったって言えるようにしよう』と話してきました。1日、1日、メンバーもベンチ外の選手も束になって、泥臭くやったことが結果に繋がって嬉しく思います」
山頂から注がれる清流も、谷間でせせらぐ川も大海へと通じている。
大阪桐蔭に置き換えれば、川の流れとは血だ。脈々と受け継がれる遺伝子が、いかなる風にも揺るがない、太く強固な骨格を形成する。誇りが自我を奮い立たせ、虚飾も虚勢も振り払い、険しき山の踏破だけを見据える。
「TōIN」から「NITTAI」にユニフォームが変わっても、山田のマインドは不変だ。
大学生となった今も、練習への質の高さは無意識に発動される。100メートル3本。徹底的に本数をこなした高校時代に比べると極端に少ない。だが、関係ない。
「タイムを測ってるんで、最後の1本でもベストを更新するつもりでやってます」
山田優太は全力で疾走する。血が、脈打つ。
〈後編へつづく〉
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