大阪桐蔭“ズルい・強すぎ”の声にOBは何を思う？「何から何まで徹底した」寮生活のリアル “普通の高校生”の自由と引き換えに…

　大阪桐蔭は関西を中心に全国から好素材が集まる、高校野球屈指の名門校である。

　故に、勝てば当然と言われ、負ければ不覚を強調される。

　先のセンバツ。大阪桐蔭は春夏通算9度目の日本一となった。初戦以外は全て2桁得点。チーム本塁打11本は大会記録を更新した。

　圧倒的な力は驚嘆以上に畏怖を植え付ける。それは批判という形で顕在化し、本来称えられるべき勝者は鋭利なものを突き付けられる。

　大阪桐蔭の日本一への道は、宿命というより、もはや宿業であるのだろう。

　日体大の野球部に所属する3年生の山田優太は、スマートフォンでSNSのアプリを立ち上げると、母校のそんな一面を思い知らされる。

　＜ズルい＞

　誰かの安直で無責任な投稿にも、敏感に反応してしまう自分がいる。

「OBになると、現役の頃より大阪桐蔭にいろんな注目が向けられるんだなってわかったなかで、今年はそれに打ち勝って優勝できてよかったなって思うんですけど」

　表情は穏やかで、笑みも浮かべている。

©Nanae Suzuki

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　世間の風評に対して恬淡を装っているつもりでも、言葉を発する山田にはやるせなさが読み取れる。怒りより悲しさ。純粋な高校生の気持ちを踏みにじられるような気分。

「大阪桐蔭はプロ野球だったり、目指すものがはっきりしている選手が集まっていたり、野球をする環境がいいからこそ、自分というものを持っていると思うんで。だから、そういうコメントとかを見てしまうと『わかってないな』って思っちゃいますよね」

　かくいう山田も、最初はわからなかった。

二刀流で注目を浴びて…「大阪桐蔭で力を試したい」

　中学時代。「大阪桐蔭」という巨大ブランドの存在こそ知っていたが、その程度だった。1年生の秋に自分が所属する大津瀬田ボーイズのグラウンドに、監督の西谷浩一が見学に訪れても「テレビで見たことがあるような気がする」と最初は判然とせず、あとから周りに「大阪桐蔭の監督やで」と教えられて驚いたことを今でも覚えている。

　時が経ち、成長の実感とともに自らの現在地を明確にしたくなった。3年生になると、中学生ながらストレートは最速142キロを記録し、バッターとしても打線の軸を担う「二刀流」として注目を浴びるようになった。山田は純粋に、「大阪桐蔭で自分の力を試したい」と名門野球部の門を叩くことを切望した。

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