中学2年の冬、大阪桐蔭から推薦入学の打診を受けた。「いや、冗談でしょ？　って自分が一番驚きました。でもすっごく嬉しかった」と笑顔がはじける。誰もが認める強豪校、卒業生の多くがプロ野球で活躍していた。夢に一歩近づけたような気がした。

　中学3年、愛知港ボーイズでのラストシーズンも全国大会出場を果たすことなく、卒団を迎えた。

「中学の野球も勉強も、自分がやれることはやり切れた」

　自信を胸に2月上旬、関西の甲子園常連校の入試会場に向かった。同じく推薦を受ける生徒とともに筆記試験に臨む。まわりを見渡すと中学野球では全国でその名を知られるような生徒の姿も。「受かったら彼らと一緒に野球ができるんだ」。興奮で入試問題が頭に入ってこない。心を落ち着かせて解ける問題をひとつずつ探した。

　入試から2日後、郵便ポストに受験校から封筒が届いた。父から封筒を受け取り中身を見ると『合格』の文字があった。「おめでとう。これから頑張るんだぞ」。春から始まる高校生活が実感に変わった。

　4月からは親元を離れ、寮生活が始まる。スマートフォンとはしばしお別れ、グローブやバットとともに音楽プレーヤーを鞄に入れた。

「僕にとって音楽は大切な存在。気持ちを奮い立たせたり、落ち着かせたり。何をするにも音楽を聞いています」

　最近のお気に入りは優里の 『レオ』 という。

「皆と一緒に野球を楽しみたい」

　高校野球での目標を「ホームラン70本ぐらい……」とつぶやくも、「やっぱり高校記録を塗りかえるような選手になりたい」と目を輝かせる。野球が好きだ、その思いは誰にも負けない、負けたくない。

「スリランカ人だから、日本人だからではなく、僕は一人の野球人としてプレーしたい。皆と一緒に野球を楽しみたい。それが一番の目標です」

　さんさんと輝く太陽のようにラマルが笑った。

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