思い出される“PL学園×帝京の激闘”

　3番打者としてチーム最高の打率.375を記録し、ショートとしても盤石の投手陣を支え、主将として牽引した立浪。選抜ベストゲームは帝京との激闘だと言った。石貫と同じく、後にプロへ進む好投手・芝草宇宙との対戦。優位に試合を進めたが、9回に追いつかれ、10回は無死一、三塁と大ピンチを招いた。しかし、3番手の岩崎が踏ん張って切り抜ける。11回の攻撃の起点になったのは立浪。二死一、三塁からサヨナラ打が出て、決着がついた。

　芝草擁する帝京とは夏にも準決勝で再戦している。「事実上の決勝戦」とも言われ、PL学園は事前に作戦を立てて芝草攻略に成功している。

「打順が奇数の選手は変化球を、偶数の選手はストレートを狙えというものでした。3番だった僕は変化球を狙いました。1回に2ランを打ったのもカーブ。きっと芝草くんは、最後まで何を狙われているのかわからなかったと思います」

KK世代もなし得なかった春夏連覇

　余談ながら夏の甲子園では全6試合、初回に先制している。そんな横綱相撲をとれたのも、春に自信がついたから。粘って、しのいで勝ち取った紫紺の大旗は、2学年上の清原和博、桑田真澄ら、偉大なKK世代でもつかめなかった。

1986年3月、PL学園の卒業式 ©Katsuro Okazawa/AFLO

　冒頭に書いたように、プロ野球の監督になるような人でも、球児として甲子園の土を踏めるかどうかは別である。出場し、優勝してドラフト1位。新人王に輝き、名球会に入り、野球殿堂入りも果たした。そして、満を持しての監督就任。輝ける人生の原点は、35年前の選抜にある。

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