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館山昌平がヤクルト時代の先輩・岩村明憲に“逆オファー”してまで「福島」にやってきた理由…“投手強化”だけじゃない東北への想い
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byFUKUSHIMA RED HOPES
posted2022/03/12 11:00
3月11日、黙とうを捧げる福島レッドホープスの館山投手チーフコーチ
3月10日から春季キャンプがスタートしており、館山も精力的に指導に当たっている。レッドホープスの選手たちの印象を聞くと、館山は笑顔になった。
「一人ひとり、明確な目的意識を持っているので、とにかくあちらからどんどん質問をしてくれるでんすよ。トレーニングについてもいろいろと聞いてくれる投手が多いです。チームのトレーナーも、『自分ももっと勉強したいから』といって、僕と投手陣の会話に耳を傾けてくれます。とにかく、やりがいのある環境でやらせてもらっていますね」
そして、もう1つの大事な役割がレッドホープスの知名度を上げることだ。現在の肩書は投手チーフコーチ兼企画営業。名刺も作った。
「今はもともといらした営業のかたと一緒にスポンサーの方々へ挨拶周りをしたり、イベントの企画を出したり……いろいろなことに挑戦しています。19年、NPBにいて、今初めて社会に出たというイメージですね。こうやってレッドホープスで運営の大変さに触れたり、企画営業に携わらせてもらって、改めて、球団の裏側まで見ないと、知らないことがたくさんあると感じました。同時に今までどれだけヤクルト、東北楽天にお世話になっていたか、球団、選手に関わる大勢の方たちにおぜん立てをしていただいていたか、改めて知ることができる。ありがたさを痛感しています」
想像以上に福島レッドホープスを取り巻く環境は恵まれていると館山は感じている。グラウンドをはじめとする練習環境は、確かにNPBと比べると整ってはいないかもしれない。それでも公園を転々とするとか、河原で練習するといった、聞くだけだった“独立リーグの置かれた環境”とは全く違う。練習着やユニホームの支給も十分あり、スポンサー企業も多い。
「オフの期間、選手はアルバイトをするのですが、『うちに来いよ』と声をかけてくれる企業がとても多いんです。自分が想像していた以上に、地元に根付いているんだと実感しています。この環境をより良いものにしていきたいと今は感じています」
東北の復興も、レッドホープスの現状も、実際にその土地に足を運び、住んでみなければわからないことばかりだと語る。
「これからはもっと広報活動をしたり、いろいろな場面でチームの周知活動をします。これまで、レッドホープスが福島で築き上げてきた地元の方たちとの関係を強固にすることが目標ですね。サポーターの方々にも早く挨拶したいですし。営業企画のほうも、これからもっと本格的に活動していく予定です」
「可能性を持った選手が揃っている」
最後に、営業企画担当者としてレッドホープスの魅力はどこだと思うかと尋ねると、館山はこう答えた。
「MLBを経験されている岩村監督のもと、たくさんの可能性を持った選手が揃っているところでしょうか。そして、プレーはもちろんですけど、選手たちは福島、そして福島に限らず県外の方たちからサポートしていただいていること、そのサポートがあって球団が成り立っていること、その方たちに感謝することの大切さを十分理解しています」
3月11日、東日本大震災から12年目の春を迎える福島で、館山は選手たちと一緒に汗を流していることだろう。そこに住む人たちの心が豊かになるために、野球が一役買うことを心から願っている。
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