欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
オナイウ阿道に学ぶ“新生活の心得”「Look at me!」と「シルエットはかせ」で馴染んだフランスリーグ、大迫との比較にもブレない俺流
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byGetty Images
posted2022/03/06 11:01
昨夏に仏2部トゥールーズに加入後、すぐにチームに馴染んだFWオナイウ阿道(写真は21年9月)。公式戦10ゴールをマーク(3月4日時点)
フランス初ゴールを決めたディジョン戦後、自身のインスタグラムにこう投稿した。
「やっとシルエット博士できた もっとできるしもっとやらないと!!! 次の試合に向けてまた頑張ります もっと貢献できる様に頑張ります!!!」
両手の親指と人差し指を立てて、顔の前で交差させる。NHK『おかあさんといっしょ』でお馴染み、花田ゆういちろうさんが演じる“シルエットはかせ”の決めポーズを、ゴールに沸くサポーターに向かって披露した。2歳と1歳の娘のパパらしいチョイスだ。
「下の子はアンパンマンが好きなんですけど、アンパンマンのポーズは(前田)大然がたくさんやっていますからね(笑)。昔はゴールパフォーマンスなんて、全然やっていなかったんです。でも、子どもたちがEテレの教育番組を見始めて、僕も一緒に見るようになって。普段、子どもたちがシルエット博士のテーマソングを歌っていたら、僕も口ずさんでます(笑)。わかりやすいポーズだから、子どもたちも喜んでくれるかなと思って。家族のために“点を取ったらこれをやるぞ”って決めていれば、モチベーションにもなりますからね」
ポーズのわかりやすさは、子どもたちにとっても、フランス人にとっても同じだったようだ。トゥールーズサポーターのSNSを覗くと、多くの“フランス人シルエットはかせ”の画像が見つかる。プレーの実力と、明るいキャラが愛されている証だ。
壁にぶち当たっても「自分を信じる」
トゥールーズでは加入からわずか半年で、公式戦10ゴールを決めた(3月4日時点)。J2山口時代にリーグ戦22得点、J1の大分で10得点、横浜FMでは1シーズン半で16得点。オナイウは、新たな環境に挑むたびにステップアップしてきた印象がある。
しかし、本人の認識は異なる。
「挫折、しまくりですよ。千葉から浦和に移籍したときは周りがすごい選手ばかりで、本当に何もできなかった。『試合にさえ使ってもらえれば、点は取れる』と思っていたけど、全くチームの力になれなかった。山口では点を取れたけど、チームはなかなか勝てない時期が続いて。大分でも後半戦はほとんど点が取れず、F・マリノス1年目も監督の信頼を勝ち取るようなプレーができなかった。だから、落ち込んだり、“うわ~、どうしよう”と悩んだこともいっぱいあります」
常にポジティブなストライカーでも、新たな環境でうまくいかない時期は必ずある。そんなとき、大切にしてきたことがある。
「自分を信じること。これはずっと続けてきました。僕は基本的に、うまくいかないから何かを変えることはしません。今までやってきたことを、とにかく信じる。そして試合に使ってもらえなかったり、試合でうまくいかなかったことを、監督やチームメイトのせいにするんじゃなくて、自分にフォーカスする。監督に信頼してもらえないのは、自分に何かが足りないから。その“何か”を意識しながら練習して、試合になればやってきたことを信じる。
試合中も点を取れるときって、自分を信じ切れているんです。どれだけチャンスが少なくても、“1回はボールがこぼれてくる”と信じて走り込んでいると、本当に転がってくる。逆に言うと、自分を信じ切れていない試合では、あと一歩が出ていないんですよね」