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プロ野球スカウト「あの年は田中正義に柳もいて…」6年前、あの「高卒ドラ1投手」2人は今「1年目から一軍で10勝すると思ったが…」
posted2022/03/04 17:20
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
3月になって、プロ野球界はスプリングキャンプからオープン戦の段階に進んでいる。
キャンプ地から聞こえてくる多くの報道の中に、ソフトバンク・田中正義投手が紅白戦、練習試合での登板で、いよいよ大器の素質開花の兆しを感じさせる投球を見せている……というものが、何度かあった。
プロ6年目、ドラフト1位指名という絶大な期待を担っての入団とはいっても、そろそろ一本立ちしないと、もう後がない。瀬戸際に近い危機感の中で、ヨイショ!と踏みとどまろうとする姿が、頭に浮かんだものだ。
田中正義といえば、2016年のドラフトだ。
ソフトバンク以外にも、ロッテ、日本ハム、巨人、広島……合計5球団からの1位指名を受け、抽選の結果、ソフトバンクが手中に収めた。
その年、明治大のエース・柳裕也投手は中日、横浜から1位指名を受けて中日に進み、昨季はエースピッチャーという称号にふさわしい奮投を続け、西武が単独1位指名した今井達也投手(作新学院)も8勝をマークしてローテーションの一角を占めた。
昨季は故障で3勝に終わったものの、オリックス単独1位の山岡泰輔投手(東京ガス)だって、それ以前の4シーズン32勝の働きによって、チームを支える快腕の一人となっている。
もう2人の“高卒ドラ1ピッチャー”
2016年のドラフトでは、あと2人の高校生投手が、単独1位指名を受けた。横浜高の右腕・藤平尚真が楽天に、履正社高の左腕・寺島成輝がヤクルトに、それぞれ単独1位指名されていた。
共に、世代ナンバーワンの右腕、左腕として甲子園を沸かせた2人の台頭を待ち望んで久しい。
ルーキーイヤーに、先発投手としていきなり3勝をあげた藤平尚真。
チームの長い連敗にひと区切り打つタイミングでの奮投が2度もあって、「勝ち方」が鮮烈だったこともあり、藤平投手に対する期待はおのずと高まったものだが、その後の、もうワンプッシュ、ツープッシュの報が届いてこない。
あるスカウトの方が、こんな話をしていたことがある。