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JリーグPRESSBACK NUMBER
「8時前には練習場に来い」「このままだと下のカテゴリーに行くぞ」神戸・三浦淳寛監督が若手選手に“厳しい言葉”をかける理由
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakashi Shimizu
posted2022/03/05 11:01
2006年、キャプテンとしてヴィッセル神戸をJ1昇格に導いた三浦淳宏(現:三浦淳寛監督)。自身の現役時代の経験を踏まえて、若手選手への期待を語った
若手の奮起を促した三浦監督の「率直な言葉」
――彼らの取り組み方が足りないと。
ですね。正直に彼らに伝えました。たとえば、ヴィッセルユース出身の中坂(勇哉)には、「今のままだと何も変わらない。ものすごい才能を持っているけど、それを活かせるかどうかは自分次第だ」と。プロの選手にここまで言うのは申し訳ないとは思いながらも、「朝6時には起きて、歯磨きをして、顔を洗って、食事をしながら心の準備をしろ。そして、8時前には練習場に来い」と伝えました。うちは9時半から練習が始まりますが、「8時前にクラブハウスへ来て、体の準備を始めろ」と。そして1年間、僕は毎日見張っていたんです。「高校生じゃないんだから」と反発する選手もいるかもしれません。でも、中坂は1日もサボらなかった。
――中坂選手は2021年、プロ6年目にしてリーグ28試合出場で3得点をマークしましたね。初瀬亮選手も同年レギュラーに定着しました。
初瀬も毎日、一番早くにクラブハウスに来てランニングなどの自主練習をやっています。彼にも課題をはっきり伝えました。そこで彼が朝の練習をやめるのが怖いと思えるようになれば、僕の勝ちだなと(笑)。最近になって「自主練をやめたら?」と聞いたところ、「やめるのは怖いです」と答えました。今もずっと続けていますね。走るだけじゃなくて、体のケアをしたり、自分を補う時間を過ごしています。
――佐々木大樹選手もスーパーサブとして活躍しています。
佐々木は2018年から1年間、ブラジルのパルメイラスへ期限付き移籍をしていました。帰国後に「調子はどうだ?」と聞いたら、「結構いいです」と答えたんですよ。でも、僕らスタッフの印象はまったく逆でした。だから「全然よくなっていない。このままだと下のカテゴリーへ行く選択をすることになるぞ。せっかくこれだけの可能性があるのに」と伝えたんです。「この1年、自分ができることを徹底してやりなさい」と。
――そういう厳しい言葉によって選手が変わっていくのは監督冥利に尽きますね。
僕の眼、僕の評価のなかでは、彼らは非常にレベルアップしていると感じています。でも、彼らの性格を考えると、ここで気を緩めたら、このまま横ばいか、下がってしまう。だから「ここからさらに上を目指しなさい」と言っています。中坂、初瀬、佐々木だけでなく、ヴィッセルでは郷家(友太)や小林(友希)、小田(裕太郎)をはじめ、有望な若手が切磋琢磨しながら、真摯にサッカーと向き合っている。そういう彼らをサポートしながら、活きる環境を整えるのも僕の仕事だと思っています。