Jをめぐる冒険BACK NUMBER
森保ジャパン、即席ミーティングの内実は… サウジ戦での臨機応変さと必殺の“ポケット攻略”〈史上初のW杯最終予選5連勝〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/02/02 11:45
伊東純也の追加点に一体となって喜ぶ日本代表。サウジ戦の快勝はチームにさらなる勢いをもたらすはず
メンバー変更とともにストロングポイントが変わる
メンバーの変更とともにチームのスタイルやストロングポイントが変わるのも、今の代表チームの強みとなっている。
この日もリードして迎えた後半に前田大然、浅野拓磨といったスピードスターを送り込み、反撃に出ようとするサウジアラビアの喉元に鋭利なナイフを突きつけるように、カウンターを繰り出した。
彼ら交代選手の貢献は追加点を狙う“裏抜け”ばかりではない。無失点で終えるために前線からのプレスの強度を高めてくれてもいた。
チームのスタイルを大きく変える“カメレオン戦術”が取れるのは、戦い方の幅が広がってきた証だろう。
広がったのはそれだけではない。選手起用の幅も広がった。言うまでもなく、センターバックのことである。
吉田麻也と冨安健洋という不動のコンビを負傷で欠いたため、今シリーズでは守備面が不安視されていた。ところが、谷口彰悟と板倉滉がレギュラー陣不在を感じさせないパフォーマンスを披露した。守備はもちろん、攻撃の起点となるプレー、ビルドアップにおける貢献度も高かった。
「批判がエネルギー」長友の意地は左SB争いを熱くする
彼らの働きに対して、左サイドバックの長友佑都が太鼓判を押す。
「僕のほうがベテランなのに、彼らの落ち着きに支えられました」
そして、その長友に触れないわけにはいかない。
ゲーム序盤に相手選手と激しく体をぶつけ合ってボールをキープしたシーンに始まり、随所で気持ちのこもったプレーを見せた。最終予選に入ってから浴びせられていた自身への批判を、プレーで払拭したと言っていい。
試合後、取材に応じた長友は終始、饒舌だった。「批判がエネルギーになった。僕のハートに火をつけてくれた。感謝している」と笑顔を交えて繰り返す一方で、「今日くらいは褒めてほしい」とも語った。やはり批判に傷ついていた面もあったのだろう。
この長友の意地のパフォーマンスが、今度は中山雄太のハートに火をつけることになるはずだ。左サイドバックのハイレベルなポジション争いの行方も楽しみだ。
サウジアラビア戦終了の約6時間後、朗報が飛び込んできた。
オマーンと対戦したグループ3位のオーストラリアが終了間際に追いつかれ、勝ち点2をつかみ損ねたのだ。
これで日本との勝ち点差は3に広がった。3月24日に予定されている次戦は、そのオーストラリアとのアウェイマッチ。勝たなければならない状況に変わりはないが、流れは日本に大きく傾いている。
最終予選6連勝の大記録とともに、7度目のW杯出場を、力強く決めてもらいたい。
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