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バスケットボールPRESSBACK NUMBER
平均プレー時間「4分39秒」、それでも田臥勇太41歳が“戦い続ける理由”「コートにいてもベンチにいたとしても…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byB.LEAGUE
posted2022/02/01 11:04
宇都宮ブレックスで在籍14季目を迎えた田臥勇太41歳。日本バスケ界のレジェンドがコートに立ち続ける意味、そして各界のレジェンドたちから受けた影響とは
はい……あの……。言葉が詰まる。
「僕は正直、イチローさんとお会いしたことはないんですけど」
「一番といっていいほどお手本にしている方」
恐縮しながらも、田臥が続けた。
「アスリートとして、一番といっていいほどお手本にしている方です。競技に取り組む姿勢とか考え方はもちろんなんですけど、自分はイチローさんの準備が印象に残っていて。前にドキュメンタリー番組を観た時に、シーズンの消化試合でその日の勝敗も決まっているなかで『もしかしたら打席が回ってくるかもしれない』と、最後の最後まで自分のルーティンを崩さず準備されていることを知ったんですね。いつどんな状況になってもいいように物事を怠らないところがすごいなって。僕なんか、とてもじゃないけど足元にも及ばないですけど、雑誌やテレビでイチローさんの言葉を目にする度に『自分も現役でいる限りは、そういう姿勢を大切にしたいな』って教えてもらいました」
その誓いは、今も守っている。
試合前の準備、ベンチでの振る舞いや思考がそうだし、コートに立ち、たとえ理想のプレーができずとも、本能が田臥を突き動かす。
「こだわりたい要素のひとつです」
ラインを割りそうなルーズボールに飛びつく。ゴール下のリバウンド、200センチ前後の大型選手に173センチの田臥が競り勝つ確率は極めて低い。しかし、相手が着地した瞬間の手元なら隙を突いてボールを奪える。
出場への飢え、プレーを追求する乾きが、田臥をより泥臭くさせているのである。
「そういうプレーの重要性って、長くやればやるほど感じているし。だから、うん、泥臭さ、当然出さないといけないと思っています。むしろ、こだわりたい要素のひとつです」
やはり、田臥の生き様はレジェンドたちと重なる。イチロー然り、ナッシュもそうだ。
NBA時代の同僚は、18年にバスケットボールの殿堂入りを果たしたスピーチで、子供たちに「努力し、目標をクリアしていくことの大切さ」を説き、こう結んだという。
「全力を尽くした時こそ、生きていることを実感できるんだ」
41歳。まるで少年時代の自分がそうだったように、理想のプレーを実現させるために鍛錬し、泥臭くコートを駆け回る。
田臥勇太は今、バスケットボール選手として生きていると、実感できている。(つづく)
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