“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
《驚異の切り返し》幼馴染の“ピピ”中井卓大も「ナイスゴール!」 静岡学園MF古川陽介が選手権で与えた衝撃と、叶わなかった「打倒・青森山田」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/12 17:03
選手権で大きなインパクトを残した静岡学園のMF古川陽介(3年)。J1ジュビロ磐田に内定しており、プロの舞台でも活躍が期待される
一方、青森山田とも因縁があった。インターハイ準決勝で0-4、シュート0本という完敗を喫したことで、チームの合言葉は「青森山田を倒して全国制覇」になった。そこから一丸となって努力を重ねてきたのだ。
「青森山田も大津も自分たちの力をきちんと出したからこそ、前評判通りに新国立の舞台に立てた。僕らも前評判は高かったけど、そこにたどり着けなかった。
本音を言うと、決勝で『古川陽介vs.松木玖生の10番対決』と言われるくらいの戦いを見せたかった。青森山田の選手も僕らと決勝で戦いたかったと思う。僕らは夏のリベンジだけど、彼らは2年前の選手権決勝の借りを返したいと燃えてくれていた。本当に観客の皆さんがワクワクするようなカードになっていたはずです。だからこそ、『相手が僕たちではなくて申し訳ない』と心から思います」
青森山田に勝つのは自分たちだと思っていた
取材は決勝戦前日に行われた。両チームへの想いが溢れる。
「青森山田が優勝すれば文句なし。3冠達成に近づいていることは本当に尊敬できるし、高みを目指してきた同い年の選手として少し清々しい気持ちになると思います。大津も夏に僕らに敗れてから多くのものを積み上げてきていたと思う。質の高いチームであることは間違いありません。……やっぱり決勝のピッチに立てなかったことが本当に悔しい。今年の青森山田から“高体連初白星”を挙げるのは僕たちだと思っていたので」
古川の高校サッカー生活は終わった。戦いの舞台はJリーグに移る。
フィジカル面など、プロとしてのベース作りに課題は多い。だが古川には明確な武器がある。
常にフィニッシュまでの図を頭に描きながら、相手の重心、味方の立ち位置や狙いを瞬間的に読み取って、ギリギリのタイミングで判断を変えられる稀有なドリブラーだ。ただ相手をかわして満足するだけの選手ではない。
「ジュビロでは絶対的な存在になりたい。観客の方々を魅了するドリブラーになって、多くのゴールを決めたいです」
まずは磐田のサポーターを魅了し、そこから再び日本のサッカーファンを魅了する――選手権よりも遥かに高いピッチの上で古川が暴れる日を楽しみに待ちたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。