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《選手権V》青森山田のエース松木玖生(3年)に芽生えた“犠牲心”「2年の時はゴールを決めたい気持ちが強かった。でも、今は…」
posted2022/01/11 11:03
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Kiichi Matsumoto
有言実行を成し遂げた――。
第100回全国高校サッカー選手権大会決勝、青森山田は大津(熊本)を4-0で下し、3大会ぶり3度目の全国制覇を成し遂げた。これで夏のインターハイ、高円宮杯プレミアリーグEAST(ファイナルは中止)と合わせて、事実上「高校3冠」を達成した。
あまりの強さからSNSなどでは「勝って当たり前」「やっぱり優勝は青森山田か」というコメントが多かった。しかし、よく考えてみて欲しい。常に勝利を求められる重圧の中で、選手権では4大会連続となる決勝進出を果たし、今シーズンに至っては高校年代の主要タイトルを全て獲得するという困難なタスクを見事に達成したのだ。ターゲットにされる中で、勝ち続けることは並大抵のことではない。
彼らはなぜ想像を絶するようなプレッシャーを乗り越えて戦い切ることができたのか。改めてこの1年間を振り返ってみたい。
松木玖生の圧倒的なキャプテンシー
「狙うは3冠。それだけです」
2021年3月、福岡県で開催された「サニックス杯ユースサッカー大会」でエースのMF松木玖生(3年)は、こう力強く宣言した。高1からレギュラーとして活躍する松木は、選手権決勝のピッチを2度も経験済みだ。しかし、いずれもあと一歩のところで悔し涙を流してきた。「選手権を獲って高校サッカーを終えたい」という思いが溢れるのは、悔しさをずっと胸にしまってきたからだろう。
「高校3冠を掲げるということはそんなに甘いことではないし、軽いことではないことは十分に分かっています。言うだけなら誰もができるということ、も。でも僕は本気です。絶対に、いや何が何でも達成したいと思っています」
松木とボランチでコンビを組み、昨季からチームの主軸を担ってきたMF宇野禅斗(J2町田内定)も続いた。
「昨年より力が落ちると言われるかもしれませんが、僕らがきちんと意識を高く持って努力をすれば必ずしも不可能ではない目標だと思っています。玖生だけが思っている目標ではないですよ。全員がそう思っています」