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《驚異の切り返し》幼馴染の“ピピ”中井卓大も「ナイスゴール!」 静岡学園MF古川陽介が選手権で与えた衝撃と、叶わなかった「打倒・青森山田」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/12 17:03
選手権で大きなインパクトを残した静岡学園のMF古川陽介(3年)。J1ジュビロ磐田に内定しており、プロの舞台でも活躍が期待される
相手陣内で囲まれてもお構いなしに加速する古川は、斜め後ろから寄せてきた選手とカバーに入った選手の2人をそこで置き去りにした。そしてエリア付近で対峙したDFに対し、右足で細かくボールタッチして間合いに入ると、「いつもならあそこで縦に行くのですが、2回戦の近大和歌山戦であまりうまくいかなかったので、一度中に行ってみようと思って」と右に大きく持ち出してカットインし、シュート体勢に入った。
だが、ここでも古川は冷静だった。「シュートを打とうとしたら、相手がスライディングしてきて『当てられる』と思った」と一瞬の判断でシュートをやめ、右足の裏で左に切り返すと、完全に振り切られた2人のDFを尻目にすぐさま左足を一閃。「かわしてすぐシュートというのは常に考えていた」と流れるような動きでボールをゴール右隅に流し込んだ。
一連のシーンはSNSでも大きな反響を呼び、「今大会ナンバーワンのゴール」「静学の10番らしいテクニカルなゴール」と称賛のコメントが続出した。
会場を騒然とさせたインハイでのアシスト
実はベスト4に輝いたインターハイでも、古川は今大会の2ゴールに匹敵するスーパープレーを魅せていた。
準々決勝の大津戦、0-0で迎えた34分。左サイドでパスを受けると、高校屈指のサイドバック・日高華杜(3年)と対峙した。右足でクロスボールを入れようとした古川だったが、「日高選手の反応が良く、ブロックに来たので、このまま蹴っても当たってしまう。キックフェイントというより、キックストップを選択しました」とクロスのモーションから右足のインフロントで縦に持ち出し、一気に突破を仕掛けた。
エンドラインまで持ち込んだ古川に、日高もスライディングで必死に食らいつく。しかし、これは古川の計算通りだった。
「相手がスライディングに来ることはわかっていたので、最初から左足のクロスはフェイントでした」
鋭く左足で切り返して、右足クロスのモーションに入る。日高も素早く立ち上がり、再びブロックを試みる。それでも古川は冷静だった。
「びっくりしました。でも『ならばもう一度右足で縦に切り返そう』と思った」
再度、右足のインフロントで切り返して縦突破。これにはさすがの日高もついてこれず、完全に相手を振り切った状態でピンポイントクロスを供給。これがFW持山匡佑(3年)の決勝弾に繋がった。
圧巻の3連続切り返しからの決勝アシスト。会場にいた多くの人から「なんだ、あのプレーは」と驚嘆の声が上がっていた。