それまでクールなイメージだった板野が、チームKに移ってからはそのカラーに自ら積極的に合わせていったため、ほかのメンバーからは「ともちんさんが、あんなに熱い人だとは思わなかった」と意外性をもって受け止められた。しかし、結束力やグループ随一の激しいダンスなどから体育会系とも呼ばれたチームKは、AKB48に入る以前より本格的なダンスを学んできた板野からすれば、むしろ水が合って当然だったのかもしれない。

写真は2012年の板野友美生誕祭　©BUNGEISHUNJU

「本田△」ならぬ「板野△」

　誰よりも早く茶髪にしたことに表れているように、板野はいわゆるアイドルらしく装うことがいやだった。AKB48の活動において劇場公演とともに重視されていた握手会もじつは苦手で、ファンにもあえてしゃべらず、ウインクなどをリクエストされても拒否した。それは、親近感を抱かせてしまえば、自分の目指すカッコよさとは違うものになってしまうという板野なりの美学だった。そんな己の美学を貫き通す姿勢が、いつしかファンにも理解され、カッコいいと言われ始める。サッカーの本田圭佑の「本田△（ほんださんカッケー）」をもじった「板野△」という言葉も生まれた。

　他方で、ファン思いの一面も見せている。2013年にグループからの卒業を発表したあと、一旦はその年の選抜総選挙への出馬を辞退しようと考えたが、握手会でファンの声援を聞いて、やはり最後だし、ファンに恩返しできるなら出ようと思い直したという（前掲書）。

©BUNGEISHUNJU

4年前に語っていた“理想の男性”

　個性を主張しながらも、チームのためにやるべきことはやるし、ファンの声援にもきちんと応える。それはチームスポーツの選手とまったく同じだ。AKB48時代の板野友美を知る者には、プロ野球選手と結婚したことは意外だったのだが、こうして考えてみると妙に納得したりもする。

　卒業後はインタビューを受けるたびに結婚について訊かれてきた。2017年には理想の男性のタイプを訊かれ、《尊敬できる人！　ちゃんとした芯があって、夢を持っていて、そこに向かって頑張っている人です》と答えている（『週刊大衆』2017年5月22日号）。ありがちな答えではあるけれど、努力を重ねて今年ついに飛躍した高橋はたしかにこの条件に合致している。

　ヤクルトのリーグ優勝、さらに日本一が決まったときには、SNSで喜びを爆発させた。クールなようでじつは熱い板野がこのときも顔をのぞかせた。一方で、仕事では歌手・俳優とともにモデル業を続け、「おしゃれ番長」ぶりも健在である。子供も授かり、公私にわたって今後、どんな展開を見せていくのだろうか。

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