酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
巨人の後半戦急失速、阪神「ほぼ優勝」レベルの躍進、ヤクルト日本一の決定的要因とは《成績で見る勝因敗因/セAクラス》
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number
posted2021/12/30 11:10
巨人の原監督、ヤクルト高津監督、阪神の矢野監督。セAクラスに導いた3球団の来季はどうなるか
昨年は36歳の坂口智隆が1番を打ち、2番の山田哲人は打撃不振。38歳の青木宣親が3番、MLBでオールスターにも出場したエスコバーは守備はともかくバットでは迫力不足。正捕手の中村悠平も戦線離脱。村上宗隆は主軸の働きだったが、主要なパーツがいくつも揃わず、最下位だった。
今季は、かねてから1番候補の評判が高かった塩見泰隆がリードオフマンとして定着。2番青木宣親が脇役に徹し、3番山田哲人が復活。一塁から三塁にコンバートされた村上宗隆が絶対的な4番として君臨。新外国人のオスナ、サンタナは抜群ではなかったが、村上の後を打つことで、相手投手にプレッシャーを与えた。そして復活した中村悠平は、6番バッターとしてもしぶとい打撃で度々殊勲打を放った。
故障もあって長く低迷していた元首位打者の川端慎吾は、代打で30安打。これは2007年、チームの先輩真中満が記録した31安打に迫る史上2位の記録。昨年揃わなかったパーツがすべてそろった印象だ。
先発・救援の整備と奥川の急成長
投手陣はエース格の小川泰弘、現役最多勝の石川雅規など新鮮味はなかったが、シーズン間際に巨人から田口麗斗が加入。明るいキャラクターでベンチを盛り上げた。
救援投手陣は、昨年、新人で最多ホールドを記録したセットアッパーの清水昇が引き続き好調。クローザーのマクガフ、中継ぎの今野龍太、石山泰稚らも手堅い活躍を見せた。
高津監督は9月から田口を救援にまわし、左のワンポイントで起用。これが効果的だった。新外国人のサイスニードが後半戦に調子を上げたこともあったが、選手起用の妙を見せた印象だ。
そして2年目の奥川恭伸が、6月に入って10日以上の広い登板間隔ながら先発で安定した成績を残し、終盤にはエース格に。この奥川の成長は非常に大きかった。
来季、盤石の4番村上、働き盛りの山田を中心とした打線は依然、期待が持てる。奥川がエースとして活躍すれば連覇の可能性もあるだろう。<パ、セBクラス編から続く>