セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イブラヒモビッチが指名した「クソみたいなクラブ」ミランが再起 11季ぶりのスクデット獲得も夢じゃない
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/12/11 17:03
10月に40歳となったイブラヒモビッチが、11季ぶりのスクデット獲得を目指すミランを牽引している
出発点は2年前のアタランタ戦の大敗にある
2019年12月22日、ミランはアタランタ相手に0-5という歴史的大敗を喫した。98年以来最悪の屈辱的スコアを受けて、守護神ジャンルイジ・ドンナルンマは恥ずかしさのあまり泣きながらグラウンドを後にした。情けなさで主将アレッシオ・ロマニョーリも悔し涙を浮かべた。
秋に途中登板したピオリの就任から約2カ月半。ミランは、前監督ジャンパオロの戦術改造失敗に起因する迷走から抜け出せず、チーム状態はドン底にあった。
年の暮れを迎えたときの順位は11位。「スクデット」と口にすることすら憚られた。
現チームの出発点は、2年前のアタランタ戦の大敗にあることをミランの全員が知っている。年が明け、イブラヒモビッチがミラネッロ練習場へ帰ってきた。同時にDFシモン・キアルとMFアレクシス・サーレマーケルスも馳せ参じた。
あの屈辱的な大敗からCL復帰に至るまで、選手たちにも監督のピオリにも、自分たちがミランを再建してきたという自負がある。
8年ぶりのCLはグループリーグ敗退に終わったが、敗れてなお、指揮官ピオリの正直な言葉に矜持が見え隠れする。
「(ユルゲン・)クロップですらリバプールを優勝させるまでに4年かかった。ミランは(まだ)CL優勝を目標にできるチームではない。私自身はよくわかっているし、クラブもファンも、それを理解しているはずだ。この敗退はミランをきっと成長させてくれる。我々はより強くなりたいのだ」
「今のメンバーたちは全員が大きく成長した」
歳月が流れ、サッカー界のサイクルが巡り、ミランは今、再び挑戦者の立場になった。とはいえ、経験は無駄にはならない。
セリエA優勝戦線は、首位ミランから勝点4差の中にインテル、ナポリ、そしてアタランタの4チームがひしめく混戦模様だ。
12月19日、サン・シーロでナポリを迎え撃つ第18節のホームゲームは年内の天王山になるだろう。
先日、国営放送『RAI』のトークショー番組に招かれたイブラヒモビッチは「ミランで現役を終えたい」と口にした。
「俺がミランに来てからいろんなことが好転した。だが、そいつは俺一人の手柄じゃない。仲間全員で成し遂げたものだ。今のメンバーたちは全員が大きく成長した。彼らと、俺はもう一度優勝したいんだ」
CL敗退を糧にミランは再びセリエAでの歩みを取り戻す。
スクデットは、もはや夢ではない。