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“異常な殺気のダービー”宿敵は46兆円資産で金満化の一方で… “どん底の元プレミア常連クラブ”23歳オーナーの「知的な」経歴とは
posted2021/12/12 17:00
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph by
Stu Forster/Getty Images
イングランドを代表するダービーマッチのひとつに、タインウェア・ダービーがある。
ともにタイン・アンド・ウィア州に本拠地を置くニューカッスル・ユナイテッドとサンダーランドAFC。
この2クラブ、というよりニューカッスル・アポン・タインとサンダーランドという2つの都市は、1642年に始まったイングランド内戦で残した遺恨がある。地理的要因だけではなく、過去に政治的対立があった両都市だからこそ、フットボールに対する熱量も一般的なダービーの比ではない。
ニューカッスルがサウジマネーで金満化する一方で
互いのサポーターによるフーリガン行為は当然のことで、それがピッチ内に影響することもしばしば。2008年のダービーではジョーイ・バートン(当時ニューカッスル)に対しサンダーランドファンが花火を投げつけるなどして29人が逮捕された。その2年と数カ月後にはニューカッスルのGKスティーブ・ハーパーがピッチに侵入した相手ファンに押し倒され、こちらの試合でも複数の逮捕者が出ている。
観客が醸し出す異常な殺気は選手にも伝染。ニューカッスルのスター、アラン・シアラーは現役引退を発表していた2005-06シーズンのタインウェア・ダービーで相手選手の強烈なタックルにより大ケガを負い、結果としてそれが現役最後の試合となった。
王党派のニューカッスル・アポン・タインに石炭に関する利権を抑えられた歴史。以降隆盛を遂げた隣町に対して、サンダーランドという街は常に後れを取ってきた。
そして近年、フットボールにおいてもこの構図が反映されている。かつて国内屈指の強豪だったサンダーランドは第二次世界大戦を境目に、1部と2部を行き来するクラブに。一方のニューカッスルは “シアラー時代” を経て低迷期に入ったが、先日世界中の話題をさらってみせた。
サウジアラビアの政府系ファンドを中心とする共同事業体によるクラブ買収だ。中心となる『パブリック・インベストメント・ファンド』の資産価値は3000億ポンド、日本円にして46兆円を超えるともいわれる。潤沢な資金を補強や設備投資に使うことが期待されており、ニューカッスルファンは明るい未来を待ち望んでいる。
イングランド史上最年少の23歳が
一方のサンダーランド、実はこちらも最近新しいオーナーが誕生した。それも、なんということか、イングランド史上最年少の23歳の新会長である。