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イブラヒモビッチが指名した「クソみたいなクラブ」ミランが再起 11季ぶりのスクデット獲得も夢じゃない 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/12/11 17:03

イブラヒモビッチが指名した「クソみたいなクラブ」ミランが再起 11季ぶりのスクデット獲得も夢じゃない<Number Web> photograph by Getty Images

10月に40歳となったイブラヒモビッチが、11季ぶりのスクデット獲得を目指すミランを牽引している

逆転弾の呼び水は構想外だったカスティジェホ

 今年のミランは何が違うのか。

 40歳と48日で迎えたフィオレンティーナ戦でリーグ歴代最年長ドッピエッタ(2得点)記録を塗り替え、ジェノア戦でも華麗な先制FKを決めたFWズラタン・イブラヒモビッチが中心にいるのは確かだが、今のミランは決してイブラ頼みのチームではない。

 前半で2点リードされる苦しい展開から、後半に怒涛のラッシュで大逆転勝ちを収めた第8節のベローナ戦では、新加入のベテランFWオリビエ・ジルーが反撃の口火を切った。何より逆転決勝弾の呼び水となったのは、後半から投入されたMFサム・カスティジェホの粉骨砕身の奮闘だった。

 カスティジェホは、今夏に一度戦力構想外通告を受けている。目標レベルを一段上げたクラブから“残念だがおまえはこれから先ついてこれない”と扱われた。心無いファンは彼をチームのお荷物呼ばわりした。

 市場で引き取り手が現れず、カスティジェホはミランへ居残った。

 周りから“みそっかす”扱いされていることはわかっていたが、決して腐らず、いつか役に立てるときが来ると信じて練習に励み続けた。

「おまえは立派なミランの一員だ」

 ようやく訪れた出番は、故障者続出で2点ビハインドという悪条件。苦境の指揮官から「頼む」と送り出されたカスティジェホは、汗を飛び散らせて走り回った。

 ベローナ戦後半の反撃が、痩せっぽちのスペイン人MFなくしてはありえなかったことは誰が見ても明らかだった。タイムアップの笛が吹かれると、カスティジェホは感極まって泣き始めてしまった。

「よくやった」

「おまえは立派なミランの一員だ」

 チームメイトたちが一人ひとり近づき、口々に感謝と称賛の言葉をかけると、カスティジェホの涙は余計あふれた。試合後に、ピオリ自身が「彼を戦力外とした判断は間違っていた」と認め、公に労をねぎらったことでカスティジェホの自尊心は救われて、チームの結束は飛躍的に高まった。

「昨日までは実の母親でさえ俺のことを煙たがっていたけれど、今日、ようやくファンと喜び合うことができる。俺は魂をグラウンドにぶつけたいんだ」

 そんな言葉も、ミラニスタたちの胸を打った。

【次ページ】 30歳の新人MFがチームの救世主に

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