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「だから表舞台から黙って消えて…」人生言いたい放題のイブラヒモビッチが明かした“引退=小さな死”への本音
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/12/11 17:02
2016年のEUROを最後にスウェーデン代表から引退したが、今年3月に5年ぶりに代表復帰。W杯予選グルジア戦に出場し、アシストを記録した
――いくらぐらいでしょうか?
「大金だ。パリ・サンジェルマンに聞いてくれ!」
――あと5分10分は駄目ですか?
「わかった。続けよう。だが僕には他にもやることがある」
――あなたの引退について聞かせてください。ピッチを離れるのは気分が落ち込むのではないですか?
「そうだろうな。引退を決めるのは誰にとっても辛いことだ。現役の間はすべてがプログラムされている。毎日、朝起きて朝食を食べ練習に行く。練習が終われば誰かが身体をケアする。昼食を誰かと食べて家に戻る。家ではくつろぎの時間を家族と過ごす。あるいは別のことをする。そして翌日にはまた同じことが繰り返される。その繰り返しが日常を支えている。僕らの頭にそれはプログラムとして入っている。僕はそうした生活を20年から25年続けている。
引退の先にある人生
引退した日の朝、起きたときにきっとこう言うだろう。『僕は今、何をしているのだろうか?』と。もはやプログラムはなく、人生の新たなページをめくる。そこに恐れを感じるかも知れない。いったい何をすればいいのかと。ただ、まだ僕はそこまで行っていないし、今はそういうことを考えたくない。そのときがきたら考えるよ」
――フランスではそれを《小さな死》と呼んでいます。
「まったくその通りだ。そこから先は、それぞれのパーソナリティによる。どうやって次の展開を始めるのか。どう戦い、どう対応していくのか……。いずれにせよ簡単ではない」
――引退に心は傾きませんか。節制の必要もなく、好きなものを飲み好きなものを食べられますが……。
「引退したら表舞台から退きたい。僕のように長くこの世界にいると、精神的にも肉体的にもどれほどのことを経験してきたかよくわかっている。だから表舞台から黙って消えて、静かに人生を満喫したいんだ」