フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「だから表舞台から黙って消えて…」人生言いたい放題のイブラヒモビッチが明かした“引退=小さな死”への本音
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph byL’Équipe
posted2021/12/11 17:02
2016年のEUROを最後にスウェーデン代表から引退したが、今年3月に5年ぶりに代表復帰。W杯予選グルジア戦に出場し、アシストを記録した
――(政治的な)立場を明確にすることを恐れていませんか?
「どの立場に立つかの問題じゃない。自分が何をするのか、どんなメッセージを送りたいのかの問題だ。僕らサッカー選手は、愛と喜びを伝える存在。僕らの世界に誰も政治を持ち込めない。僕も悪いメッセージを伝えるためにここにいるわけじゃない。人々がひとつになり、愛と喜びを分かち合うためだけにいるわけだ。それこそが僕らにできる最高のことではないのか。サッカーであろうとどんなスポーツであろうと。成し遂げるに値することで、僕らにはそれができる。僕にはサッカーでそれができる」
悪童が感じる苦痛と不安
――それではあなたにとっての苦痛は何でしょうか?
「今、語ったことを成し遂げるには、さまざまな異なる段階を経ねばならない。僕には家族がいる。僕の現在の状況は、40歳にしてコロナに直面し、世界が完全に変わってしまった。イタリアはまだいい。最近も外で食事をした。人とも会うようになり、街にも人が溢れている。
以前は違った。とても違和感があった。いつもしていたことが何もできず、たったひとつのことばかり考えるようになった。家に戻りたいと。今はもうそうではないが、あのころはずっと家にいてマスクもつけっぱなしだった。世界では今もそんな国は多いだろう。でも再びマスクをするのは気が進まないし、すべてが元に戻って日常を取り戻せることを願っている。でも将来に影響は出る。それは間違いない」
――何を恐れていますか?
「それはあなたが何について話したがっているかによる。僕は真剣にチャレンジすることに関しては恐れていない。何かをしようとすることも。恐れるのは……(躊躇いながら)病気になることはそうだ。でもそんなことを考えたら気が変になるだろう。もちろん僕にも恐れるものはあるが、僕自身はポジティブな人間だ。少なくともそうあろうとしている」
――さらに恐れの話を進めますが、親になると心配が増えるのではないですか?
「子供の話をするとき、恐れや不安は話題にはできない。逆に話せるのは弱さについてだ。ここまでデリケートで感情的なことを話してきたが、子供は弱点になる。何故なら人生が自分の手のうちから離れて、子供たちが人生を左右するようになるからだ。子供が最も大切な存在になる。自分のことよりも、子供のことの方が大事になる。それは弱点になり得るわけで……(話を止める)。
おい、とっくに30分が過ぎたぞ! これ以上は話したくない。もっと話したいというなら、凄く高くつくぞ!」