セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
欧州王者イタリアが再びW杯予選敗退の危機に 窮地のアッズーリを待ち受けるのは“白い歯を見せて笑う”C・ロナウドか
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/12/05 17:01
またしてもプレーオフに回ることになったイタリア代表。今夏に歓喜を味わったばかりの欧州王者に何が起きたのか
「もし怪我人がゼロで万全の状態なら、イタリアはどんな強豪とでも渡り合える。我々は最高のチームだ」と選手たちを信じているからこその、異例の叱咤だった。
DFボヌッチは気合いを入れ直した。
「予選の間、俺たちは知らないうちに萎縮していた。EUROの頃の俺たちは何者も恐れず、ただ純粋にゲームに突っ込んでいった。あのがむしゃらさを思い出すんだ」
プレーオフ初戦の相手北マケドニアのFIFAランキングは67位。プレーオフに参加する12カ国の中で最も低い。しかし、5年前に146位だった同国の成長ぶりは目覚ましく、3月の予選では強豪ドイツを2-1で破っている。侮るのは厳禁だ。
そして、EURO2016とUEFAネーションズリーグ2018-19の覇者であるポルトガルの危険度は言うまでもない。
世界中の耳目を集める大一番に
EUROを制した代表が直後のW杯への出場を逃した例は、76年優勝のチェコスロバキアと92年優勝のデンマーク、そして04年覇者ギリシャ。過去3回だけである。
2大会連続W杯欠場の不名誉だけは避けたい伝統国イタリアには、重圧と不安とともに過ごす長い冬がやってくる。その間には、韋駄天DFレオナルド・スピナッツォーラの現場復帰という吉報が届くと信じたい。
来年の3月、欧州王者とC・ロナウドのどちらかが、カタールの地を踏むことなく涙を飲むのは間違いない。イタリア対ポルトガルの決戦が実現すれば、世界中の耳目を集める大一番になるだろう。
“アポカリプス(世界の破滅)”とまで呼ばれた、悲劇のロシアW杯予選敗退から4年が経った。当時の代表主将ジャンルイジ・ブッフォンが涙ながらに訴えた再起の誓いを思い出す。
「俺たちイタリア人は頑固だ。必ずここから這い上がってみせる」
指揮官と選手たちの心がバラバラだった4年前とは違う。プレーオフ突破の鍵は怪我人の回復とフィジカル・コンディションのピーキング管理、そして、巨大なプレッシャーを呑み込みつつ、冷静にがむしゃらに戦う魂を再び手に入れることだ。
迷いを断ち切れ。
C・ロナウドへ「お前を待っている」と挑戦状を叩きつけるのはアッズーリの方だ。