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欧州王者イタリアが再びW杯予選敗退の危機に 窮地のアッズーリを待ち受けるのは“白い歯を見せて笑う”C・ロナウドか
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/12/05 17:01
またしてもプレーオフに回ることになったイタリア代表。今夏に歓喜を味わったばかりの欧州王者に何が起きたのか
マンチーニが3年余をかけて育て上げたチームは7月11日、ウェンブリー・スタジアムでの決勝戦でチームとしてのピークに到達した。
ただし、53年ぶりの欧州制覇とその後の短くも歓喜に満ちた休暇は、選手たちの心身を完全にリセットしてしまった。秋の始まりとともに新シーズンに向けて再起動はしたが、一度リラックスしきった生身の選手たちに、いきなり「EUROのようなインテンシティ全開モードに切り替えろ」というのは無理があった。
イタリアにとってカタールW杯出場は至上命令だが、ロンドンでのEUROファイナルからわずか53日後に再開したW杯予選ブルガリア戦で、覇気がないように見えたとしても仕方のないことだったかもしれない。
守備の要レオナルド・ボヌッチも「優勝の後、俺たちの歯車がどこかズレたのは確かだ」と、後に認めている。
ジョルジーニョには「PKキッカーから外せ」の批判
現在のアッズーリ最大の武器は“つないで守り、仕掛けて打つ。いつでもどこからでも攻める”というダイナミック・プレーだ。それはイタリア代表の新たなアイデンティティと呼べるものだ。
しかし、北アイルランド戦のアッズーリは、戦力不足の上にフィジカルもメンタルもEURO本大会時のピークからかけ離れていた。欧州の頂点を極めた理想のチームとの乖離にもがき、幻に縋るようにボールを追いかけるだけ……。秋のアッズーリは、初夏に世界を感嘆させたチームとは似て非なるものだった。
試合終了後の国営放送『RAI』のスタジオはすっかりお通夜ムードで、解説者の代表OBルカ・トーニは「今のチームは無様だと言わざるをえない。ろくにシュートも打てないし、立て直しにはショック療法が必要じゃないか」と苦言を呈した。
指揮官マンチーニは苦渋の表情で呻いた。
「グラウンドで出た結果を真摯に受け止めなくてはならない。我々はとっくに予選を通過した気になっていた。我々はスイスとの2試合で自分たちの首を絞めてしまった」