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欧州王者イタリアが再びW杯予選敗退の危機に 窮地のアッズーリを待ち受けるのは“白い歯を見せて笑う”C・ロナウドか
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/12/05 17:01
またしてもプレーオフに回ることになったイタリア代表。今夏に歓喜を味わったばかりの欧州王者に何が起きたのか
マンチーニの悔恨は、予選の直接ライバルとそれぞれ引き分けた9月と11月の2試合を指している。いずれの試合でも、アッズーリの司令塔ジョルジーニョによるPK失敗が白星と勝点を逃す要因となった。
とりわけローマの「オリンピコ」にスイスを迎え撃った2戦目のPKは、1-1で迎えた90分目に得た値千金の1本だっただけに国民の失望は大きかった。EURO決勝戦から数えて3本連続で代表でのPKを失敗したジョルジーニョに対しては、「キッカーから外せ」との批判が今も止まない。
深刻な得点力不足を露呈
攻撃陣の沈黙も深刻だ。就任から3年半、マンチーニが采配を振るった46試合で、ノーゴールに終わったゲームは5回のみ。だが、そのうち2回は今秋の予選5試合で記録したものだ。不振の現状を打開すべく、イタリア連盟はプレーオフに向け、ブラジルとの二重国籍を持つカリアリFWジョアン・ペドロの招集の可能性を探り始めた。
モイス・キーン(ユベントス)やジャンルカ・スカマッカ、ジャコモ・ラスパドーリ(ともにサッスオーロ)といった若手FWたちの爆発も期待されるが、点が取れない現状を誰より歯痒く感じているのは、4年前に悪夢のロシアW杯予選プレーオフ敗退を経験したFWインモービレやFWアンドレア・ベロッティだろう。
おそらくマンチーニはプレーオフに向けて大きなチーム改造はしない。ここまでともに歩んできた選手たちやスタッフと、一蓮托生で心中する腹積もりだろう。
イタリアン・ダンディの二枚目を気取りながら、その実マンチーニは“情の男”だ。欧州の頂点に立ったにもかかわらず、W杯予選でよもやの失態を演じた現メンバーの奮起を心底信じている。
マンチーニが異例の叱咤
もはや予選2位転落が明らかとなった北アイルランド戦の終盤、マンチーニは攻めきるガッツを失ったチームへ怒りを顕にした。タイムアップ直後には、連盟と国営放送の放映契約に含まれるベンチ脇インタビューを後回しにして、選手全員を一旦ロッカールームへ引き上げさせ、その場で一喝をくれた。
それは、ずっと話のわかる兄貴分だったマンチーニが、就任以降初めて鬼の顔を見せた瞬間だった。