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「おまえよりいい女と付き合うから別れるぜ」こっぴどくフラれた名将たちとインテル、ユーべのリベンジマッチが熱かった!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/11/27 17:00
今季より率いるナポリを首位に導くスパレッティは、捨てられるように解任されたインテルに遺恨を残す
ただし、ジャージと咥え煙草がトレードマークのサッリ親分と、ネクタイ&スーツの常勝クラブは甚だ相性が悪かった。主将ジョルジョ・キエッリーニが束ねるロッカールームからは煙たがられ、フロントもファンも外様の彼に救いの手を差し伸べなかった。
誰もが羨む“高嶺の花ユーベ”と付き合い始めたはいいが、どうやら相性最悪だったと気づいたサッリ親分は、シーズン開幕後間もない2019年10月、子飼いのスタッフを密かに集めて話し合いの場をもったことを明かしている。
「このまま、わしらのサッカーに固執し続ければ早晩クビにされるのは間違いない。だが、どうせクビになるのなら今ではなく(相手に譲歩しながらでも)何かを勝ち取ってからだ」
サッリは“勝利以外は無価値”というユベントスの流儀に渋々合わせる形でスクデットを獲ったが、喜びは薄かった。そしてシーズン終了後、予想通り1年でお払い箱にされた。後釜に就いたのは、選手として連覇の基礎を築いたOBアンドレア・ピルロだった。
「わしがスクデットを獲ったときクラブは祝う気すらなかったのに、ピルロが監督だった昨季は4位になった途端、クラブ総出でお祭り騒ぎときたもんだ。ふざけるなと思ったよ。あんなクラブで、まともに指導なんかできるか」
リベンジマッチは屈辱的な完封負け
ラツィオでの就任会見で、サッリが真っ先に述べたのが古巣ユーベへの恨み節だった。
そして、いよいよ迎えた先週末のリベンジマッチは、本拠地のオリンピコで2本のPKを決められる屈辱的な完封負け……。エースFWのチロ・インモービレを故障で欠いたことで苦戦は予想されたが、ユーベ側もFWパウロ・ディバラとDFキエッリーニという攻守の柱を欠いていた。
国外移動の手間が増え、過密日程化が進む一方のご時世では代表ウィーク明けにベストコンディションの好ゲームはだんだん難しくなっている。
何とも後味の悪い結果となったサッリ親分は、例によってPK判定に毒づき、ブーイングを浴びせかけた古巣のファンに向かって捨て台詞を残した。
「わしは元からユベントスのファンでも何でもない。あそこで真っ当に働き、スクデットを獲った。それだけだ。ユベンティーノにどう思われようと知ったこっちゃないわい」
今どき、サッリのような偏屈な指導者は珍しくなった。いつどこのクラブの世話になるかもわからないサッカー界では、グラウンドの外で敵を作らないことも大事な処世術だ。