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FW宮市亮28歳に聞く、アーセナル冨安健洋をどう見ていますか?「面識はないですけど…彼はすごい」「当時ロシツキーは本当に親切でした」 

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栗原正夫

栗原正夫Masao Kurihara

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posted2021/10/30 11:05

FW宮市亮28歳に聞く、アーセナル冨安健洋をどう見ていますか?「面識はないですけど…彼はすごい」「当時ロシツキーは本当に親切でした」<Number Web> photograph by Getty Images

11年前、18歳でアーセナルと契約した宮市亮(現・横浜F・マリノス)。今季アーセナルに加入した冨安健洋をどう見ているのだろうか?

「ベンゲルはあまり語らない人で、言葉をかけられるというよりチャンスをくれたり、行動で示してくれるところがありました。リーグ戦に出たあとも、リーグカップのチェルシー戦に先発させてもらって、それがベンゲルなりの僕への“言葉”だったというか。そのチャンスを僕がつかめなかった。若手で上に行く選手は、みんなそのチャンスをつかんでいましたから」

 アーセナルとは4年半の契約だったが、レンタルに出る期間も長く、実質フルに戦ったのは2013-14シーズンの1年だけ。宮市にとっては苦労も多かったが、そこでの経験がプロとしてやっていく上での礎になっているのは間違いないのだろう。

「いい経験をさせてもらいましたし、世界のトップ選手の振る舞いやトップ選手とはなんぞや、ということを学ばせてもらいました。レベルの高い選手はどこか偉そうにしたり、同じチームとはいえ高い心の壁があるのかなと思っていたのですが、そういうのが全然なくて。人として基本的なことができているというか、みんな誰に対しても分け隔てなく接していました。

 いまアーセナルで監督をしているアルテタとも一緒にプレーし、たくさんのアドバイスをもらいました。それからロシツキーなんて日本から来たばかりでまだ右も左もわからない僕をすごく温かく迎えてくれて、練習中や練習後に『あのプレーはどうだった』とか『もっとこうした方がいいんじゃないか』と声をかけてくれるなど本当に親切にしてくれました」

「ロシツキーたちをリスペクトしすぎてしまった」

 トップ選手と触れ合うことで学ぶことは多かった。ただ、リスペクトの気持ちがある一方で、ポジションを争うライバルとしては憧れてばかりもいられなかった。

「本当にいろいろなことを教わり、実際にプレーを目の当たりにし『わっ!すごい』と思ったこともありました。ただ、ロシツキーたちと僕はポジションを争っていたわけです。先輩としてリスペクトしつつも、その気持ちを持ちすぎてもよくないのですが、僕は少しリスペクトしすぎてしまったのかもしれません」

 約10年半の海外でのプレーを経て、横浜F・マリノスに加入したいまは、かつて自分がロシツキーに声をかけてもらったように、こんどは若手選手に声をかける立場になったともいえる。

「僕の場合はおこがましくて、自分から声をかけるってことは……(苦笑)。ただ、年齢的にはベテランといわれる部類に入ってきましたので、聞かれたことにはちゃんと答えたいですし、僕の経験を伝えることで後輩たちにいい影響を与えられたらと思っています」

 アーセナルでスタートしたプロキャリアで、宮市は常に激しい生存競争と度重なるケガとの戦いを強いられてきた。傍から見たら、その過程は苦難の連続だったようにも思えなくもない。ただ、宮市はキャリアを一からやり直せるとしても「やっぱり海外に行っていたと思う」と、自分が選んだ選択に後悔はないと強調する。

 アーセナルのあと、昨季まで6年間を過ごしたザンクトパウリは現在ドイツ・ブンデスリーガ2部で首位に立っている(10月22日時点)。

「今季は選手が揃っているので、なんとか昇格してほしい」と順位表を見た宮市はうれしそうに話した。

 次は宮市の番だ。これまでの経験を活かして、Jリーグのピッチで疾走する姿を楽しみにしているサッカーファンは少なくないはずだ。<横浜F・マリノス編から続く>

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