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メッシもグリーズマンもいなくなったバルサの希望 スペイン代表最年少デビューを果たした17歳、ガビの負けず嫌い伝説
posted2021/10/30 17:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
バルセロナの酷い財政難と少しの運がスペイン代表の歴史を変えた――と思う。
メッシとグリーズマンの2人、もしくはどちらか1人が残留していたら、コウチーニョのリハビリがもう少し早く完了していたら、ペドリが負傷していなかったら、ガビのトップチームでの公式戦デビューは遅れていただろう。
その後の出場時間も、選手としての伸び方も、もっと緩やかになっていただろう。
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また、遅かれ早かれ代表入りしていたにせよ、今月初めのUEFAネイションズリーグ決勝ラウンドのメンバーに選ばれることも、10月6日の準決勝イタリア戦に先発起用されて、代表の最年少デビュー記録を17歳と62日に塗り替えることもなかったはずである。
今季はバルサBでの活躍が期待されていた
ガビは2004年8月5日にスペイン南部アンダルシア州で生まれ、2015年の夏、ベティスのカンテラからバルサに移ってきた。
その後5シーズンは年齢どおりのカテゴリーに属していたが、16歳で迎えた昨年9月にプロ契約を結んでU-18チームに飛び級すると、12月からはバルサBの練習に加わり、今年2月、大人の戦場である2部Bリーグでデビューを果たした。
よって、今季はバルサBでの活躍が期待されていた。
ところが呼ばれて参加したトップチームのプレシーズンでクーマン監督の目に留まり、くだんのチーム事情もあって事態は一転。いまやトップチームの重要な戦力である。
ガビが今いる場所に17歳で辿り着いたことには誰もが驚いているだろうが、その一方で、彼は幼い頃から特異な存在だった。
どちらが利き足か判断できなかった
バルサのアンダルシア地方のスカウトコーディネイターで、ベティスからの引き抜きに携わったホセ・アントニオ・バルディビエソは、9歳のガビをチェックするべく初めて現場へ足を運んだ際、どれがお目当ての少年かすぐにわかったという。
「常に頭を上げて、意思の強さが感じられる視線を周りへと向けていた。自分がやりたいプレーではなく、チャンスを生み出すプレーをするところも印象的だったし、サッカーの試合というものを深く理解していた」
バルサTVのレポーターで、長年カンテラの取材を続けているジャウマ・マルセは、入団したてのガビを初めて見たとき、どちらが利き足か判断できなかったそうだ。後に右利きと結論づけたのは、右足でのボールタッチがやや多いことに気づいたからだった。