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アーセナル移籍の冨安健洋が上々のプレミアデビュー…右SB起用も適正は中央にあり? ケイン、ルカク、C・ロナウドとの胸熱マッチアップも
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/09/17 17:04
ほぼぶっつけ本番でデビュー戦に臨んだ冨安。安定した守備に加え惜しいボレーシュートを放つなど、十分な存在感を示した
空中戦勝利数は両チームトップを記録
さて、今シーズンのアーセナルは出だしから躓いた。開幕戦でブレントフォードに0-2の敗北を喫し、その後はチェルシーに0-2、シティに0-5……。ミケル・アルテタ監督は、第4節からの5試合で結果、内容が伴わなかった場合、解雇されるともっぱらの噂だ。
「チェルシーのアントニオ・コンテ元監督と合意」との情報は彼のエージェントを務めるフェデリコ・パストレーロが全面否定したものの、アルテタは針のムシロに座っている。一戦一戦が勝負であり、新戦力をテストする余裕はない。したがって冨安のデビューは、早くて9月下旬とも考えられていたのだが……。
9月11日のノリッチ戦で、冨安は右サイドバックの先発に起用された。
チームに合流したのは2日前。トレーニングセッションで連携を図る時間は与えられず、ほぼぶっつけ本番。東京オリンピックからワールドカップ予選と連戦が続き、心身ともに疲れている。デビューの条件としては最悪に近い。
しかし、周囲の不安はお笑い種だった。
冨安は堂々としていた。真剣勝負を楽しんでいるかのような余裕が表情から感じ取れた。8回の空中戦で7回勝利。ノリッチが肉弾戦を好まないスタイルとはいえ、このデータは両チーム中でトップだ。胸を張っていい。
また、前半終了間際にはペナルティボックス内まで攻め上がり、あわや先制ゴールかと思わせるボレーを放った。足の痙攣で61分に退くまで、攻守にわたり申し分ないプレーを披露した。
イアン・ライトが「ファンタスティック」と興奮
『BBC』(英国公共放送)で解説者を務めたアーセナルOBのイアン・ライトが「ファンタスティック」と興奮し、アルテタも「腹が据わっていた」と高く評価した。ベンチに退く冨安を、多くのサポーターとベンチの同僚が拍手で迎えた。一連の現象が、上々のデビューを物語っている。
冨安が右サイドに入ったことで、アーセナルはビルドアップがスムーズになった印象がある。安全策に終始したエクトル・ベジェリン(この夏ベティスにローン)やセドリク・ソアレスとは異なり、冨安はクサビのパスを入れることを怖がらず、なおかつタイミングのいいインナーラップでも貢献していた。