甲子園の風BACK NUMBER
順延続きの甲子園に“振り回された”各校応援団の本音…「コンクールの練習ができない」「宿泊経費のために募金」「3回滋賀にトンボ返り」
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2021/08/25 11:01
2019年夏、アルプススタンドで応援する智弁和歌山高校応援団。 来年こそは満席の応援席で、密を気にせず大声で応援出来るだろうか
近江の対戦相手で、18年ぶりの出場となった日大東北(福島)の応援団は、16日夜に甲子園に向けて出発したが、順延の連絡を受け、途中で郡山に引き返した。予定が変わったため、吹奏楽部は19日に持ち越しとなった試合には来ることができず、高野連が用意した尼崎市立尼崎高校吹奏楽部の録音音源を流して対応した。同校のように、急な予定変更で来られなくなった吹奏楽部は少なくない。
「コンクールの練習ができない」「宿泊用の経費が…」
同じく17日に試合予定だった前橋育英(群馬)の吹奏楽部は、前日に群馬を出発し、順延で3日間も京都に滞在するはめに。「これだけ泊まっている手前、1回ぐらいは応援しないと気が済まない。自然が相手だけに難しいのはわかるのですが、もう少し早めに対応してくれるとありがたいのですが……」と、吹奏楽部顧問の柿沼晴吾氏は話す。結局19日に試合が開催され、吹奏楽部はようやくアルプススタンドで無事演奏することができた。
作新学院(栃木)は、試合2日前の17日に出発したが、やはり雨天順延を危惧していた。吹奏楽部は、9月4日に神奈川県で開催される東関東吹奏楽コンクールに、栃木県代表として出場が決定している。コンクールが近いと甲子園に来られない吹奏楽部も少なくないが、同校吹奏楽部は野球応援が好きで、力を入れていることもあり、今回も迷わず駆け付けた。しかし、これだけ雨が続くとさすがに予定が狂ってしまう。コンクール前は、本番に向けて曲の細部まで演奏をブラッシュアップすべく、集中して練習する。1日1日がとても貴重な時期だけに、「練習もままならず、今日も順延だろうか、とヤキモキしていました」と吹奏楽部顧問の三橋英之氏は胸の内を語る。
何度も順延が続いて、野球部も調整に苦慮したと思うが、はるばる甲子園までかけつけた応援団にもこのような苦労があったのだ。
バス代に加え、遠方の学校は宿泊費もかさむなど、経費に関する苦労も絶えない。日本文理(新潟)は、校長名で「ご存じのとおり雨のため順延が相次ぎ宿泊費等の経費が予定以上に見込まれる事態となっています。つきましては多くの皆様から支援の募金に協力いただきたくお願い申し上げます」という文書を公表し、学校の公式サイトで募金を呼びかける事態となった。