Jをめぐる冒険BACK NUMBER
吉田麻也「まだ倒れるわけには…」スペイン戦のダメージは否めない それでも「メダリストで終わる」東京五輪世代の集大成を
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYukihito Taguchi-USA TODAY Sports/JIJI PRESS
posted2021/08/04 16:30
スペインに敗戦後、森保一監督の話を聞く日本代表。心身ともに厳しい状況なのは間違いないが、結束が揺らぐことはないはず
目標だった金メダルには届かなかった。精神的・肉体的なダメージは小さくないが、これで大会が終わったわけではない。8月6日には3位決定戦が予定されている。2017年12月に立ち上がったチームは、ここまで51試合を戦ってきた。
その集大成とすべき戦いが残されている。
ロンドンの時は、準決勝で燃え尽きた感があった
スペイン戦後、ミックスゾーンに現れた吉田は現在の心境を問われると、大きく息を吐いて、こう言った。
「まだ倒れるわけにはいかないなと思っています。次勝って、メダリストで終わりたいです」
吉田と酒井宏樹が出場した2012年のロンドン五輪で日本はベスト4まで勝ち上がりながら、準決勝でメキシコに、3位決定戦で韓国に敗れている。
メダリストとオリンピアン――その間に横たわる溝の大きさを、吉田や酒井は身をもって知っているのだ。
「ロンドンのときは、ここでメキシコに負けて、燃え尽きてしまった感があった。そうじゃなくて、やっぱりメダリストになりたいです。育成年代で、このメンバーでやれるのは最後の試合になると思います。これが終わると、さらに上へのし上がっていく選手もいれば、結果が出なくて燻ってしまう選手も出てきます、正直ね。それがプロの世界だと思うし、できればみんなとまた一緒に戦いたいですけど、そんなに甘い世界じゃないので。この世代、本当にいいチームだと思うので、何としても最後、勝って終わらせてあげたいと思います」
この吉田の言葉には、オーバーエイジとしての責任と、後輩たちに同じ悔しさを味わわせたくないという経験者としての優しさが満ちている。
「せめてものケジメとして、麻也さん、宏樹くんに」
一方、久保はいかにも彼らしい言葉で、ここまで引っ張ってきてくれた先輩たちへの思いを語った。
「せめてものケジメとして、麻也さん、宏樹くんに銅メダルを渡したい。あの人たちは僕たちより悔しい思いをするのが2回目なので。渡して、それで帰りたいと思います」
ここにこそ、チームが築き上げた関係性がある。
2試合続けて120分を戦い、体力の限界に達している選手も少なくないだろう。メキシコとの3位決定戦は、まさに死力を尽くすゲームとなる。
メダリストになるため、そして、このチームのラストゲームを悔いなく戦い終えるために。気持ちを切り替え、自らを奮い立たせてほしい。勝利で、笑顔で最後の1試合を終えてもらいたい。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。