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吉田麻也「まだ倒れるわけには…」スペイン戦のダメージは否めない それでも「メダリストで終わる」東京五輪世代の集大成を
posted2021/08/04 16:30
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Yukihito Taguchi-USA TODAY Sports/JIJI PRESS
いつもなら質問者の目を見て答える久保建英がこの日は、うつろな感じで言葉を絞り出している。
田中碧や堂安律の目には光るものが浮かぶ。
キャプテンの吉田麻也は、選手とメディアを仕切る柵にしなだれかかるようにして質問に答えていた。そうでもしなければ立っていられないというように――。
試合後の選手たちの様子が、いかに激闘であり、ダメージの大きい敗戦だったかを物語っていた。
8月3日に行われたスペインとの準決勝は0-0のまま延長に突入し、残り5分となった115分に途中出場のマルコ・アセンシオに決勝ゴールを叩き込まれた。
「もう願うしかできないのでそういう気持ちでいましたし、身体も本当にボロボロだったので。代わって正解だなと、自分でベンチで思っていたくらいでした」
90分を終えたタイミングで交代した堂安は、仲間の戦いを見守った延長戦での心境を、こう明かした。強気な発言が多く、メディアに対して弱音を吐くことが滅多にないからこそ、その言葉は真実味を帯びていた。
あと一歩、その一歩が大きな差だった
あと一歩、だったのは間違いない。
とりわけ延長戦に入ってからは、スペインを土俵際まで追い込んでいた。
中山雄太のクロスに対して前田大然が頭で合わせた102分のシュートが入っていたら、あるいは、ゴール前の混戦で三好康児が放った111分の渾身シュートが入っていたら、結果は逆のものになっていたはずだ。
だが、その一歩がまだまだ大きな差であることも事実だった。
チームとしても個人としても、スペインとの間には歴然とした差が横たわっていた。