1死二塁、ボール2つが先行した場面、フォークボールでストライクを取りにきたのには驚いた。困った時は、このフォークがあって……スライダーも小さく鋭い変化。速球も、どうやら“ワンパターン”ではないようだ。場面、相手打者によって、「135キロ」でご機嫌をうかがっておいたり、渾身の「143キロ」だったり、楽しんで強弱をつけているように見える。

　ちょっと心配があるとすれば、この日の試合で、たまにタイミングよく捉えられた時に、あれっ！と思うほど速い打球になったり、イメージ以上に飛距離が出たり……ボールに、まだ本当の重量感や破壊力が備わりきっていないせいか。今は体力アップの途上、そのへんも「伸びしろ」と考えたい。

「小園、初めて見ましたけど、貫禄ありますよ……さすが、智弁和歌山を3回もやっつけただけのことはある。あれだけの強豪だし、監督もプロで長かった人なんだから、やられた後は徹底的に研究したはずでしょ。それでも繰り返し抑えてるっていうことは、小園のほうも、そのたびにピッチングのバリエーションを変えてるってことですよ。彼の場合は、キャッチャーの松川とセットで考えたほうがいい。キャッチャーが松川じゃなくなった時に、今とおんなじことが出来るのか、どうかね……そういうピッチャーって、いますからね」

　そこまで真顔で「小園健太」を語ったスカウトが、一転、表情を変えた。

「でもね、好みで言ったら、僕は『新庄』のほうだな……。彼には、センスを感じる。打者を抑えるっていうよりも、アウトを重ねていくために投げてるっていうの？　打者だけじゃなくて、なんなら走者でアウト取ってもいいわけでしょ。そういう意識や視野の広さみたいなものを感じる。安倍さんがよく言ってる『実戦力』っていうやつですよ。そう、不利なカウントからフォークでカウント立て直すなんて、ああいうのは『いたずらごころ』っていうの？　そういう人間的なセンスがなかったらできないですよ。相手を手玉にとるって、そういうことでしょ」

　24日の第1試合で、とうとう東海大菅生打線から2本のホームランが飛び出した。楽しみにしていたミラクル左腕・本田峻也投手（3年・179cm73kg・左投左打）が、肩に違和感ありとして登板を回避したのは残念だったが、この先も、胸躍るような投手の登場が期待される今大会。「センバツ快腕、剛腕レポート」は、さらに続く。