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プロ野球スカウト「好みでいったら小園(市立和歌山)よりも『新庄』だな」 センバツ現地で見たピッチャー“本当の評価”
posted2021/03/27 11:03
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
大会第4日までの12試合で、ホームランが1本も出なかった(第5日に13試合目にして東海大菅生が記録を破る)。
これには、ちょっと驚いている。一昨年の「2019センバツ」を調べてみたら、1回戦の4日間12試合で5本のホームランが飛んでいた。
やはり、今年のセンバツに出場してきている投手たちのレベルは、予想通り、相当に高いようだ。投高打低……いやいや、それは違う。ここまでの12試合をつぶさに取材してみて、打者の技量だって、決して低くはない。結果として、安打、長打にはならなくても、快音を発した鋭い打球も数多く飛んでいる。
それでも、投手たちのレベルに打者の技量が追いついていかない……それが、「2021センバツ」のここまでの実情といってよいだろう。
(1)一塁けん制でハッとした八戸西189cm右腕・福島蓮
22日、大会第3日の第1試合。「21世紀枠」同士の対戦となった八戸西vs具志川商。
八戸西のエース・福島蓮投手(3年・189cm72kg・右投右打)の潜在能力に目を奪われた。
先発の5イニングで6安打5失点…三振も5つ奪ったものの、2回には下位打線に4連打を浴びて一挙4失点。そんな展開だけ見れば、誰もほめない投球内容だろうし、本人も、マウンドが合わなかったなど理由を挙げて、不本意なピッチングだったことを語っている。
セットポジションからの速球が135キロ前後。走者を背負うと130キロ前後に減速、初回の投球練習からスライダー、カーブがすべて抜けている。大丈夫かな……と心配したが、ハッとする瞬間があった。
一塁けん制の機敏な足さばきと、猛烈な送球の勢いだ。
一塁手が大きく弾いたのは、びっくりするようなスピードとホップするような伸びがあったからだ。このボールが投げられるのなら……。
一塁けん制には、その投手の「ポテンシャル」が如実に現われる。反動を使わず、突然起動して素早く全力投球する難しい「瞬間動作」。その代わり、打者に投げる時のように、コースを狙わなくてもよい。「だいたい」で投げればよいのだから、存分に腕を振れて、その投手の「MAX」が垣間見れる。
これだけの長身で、見た感じ、ヒョロリと頼りなげに見えるユニフォーム姿なのだが、隠し持っている「投げるパワー」……瞬発力はすごいものがありそうだ。
プロで5年後「150キロを出せる」
通路のモニターで確かめに行った。