甲子園の風BACK NUMBER
賛否ある“いきなり同地区対決”など異例のセンバツだが… 福岡vs沖縄の九州勢だからこその“超・心理戦”とは
posted2021/03/27 06:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
KYODO
舞台を聖地に移し、再び雌雄を決する時がきた。
九州大会2位でセンバツ出場を果たした福岡大大濠(福岡)と、21世紀枠で甲子園切符を手にした具志川商(沖縄)。昨秋の九州大会準々決勝では、3-0で福岡大大濠が勝利している。福岡大大濠にとっては大崎(長崎)戦に続き、同じ地区の高校との対戦。新型コロナウイルス感染拡大によって組み合わせ抽選が簡素化されたことで、初戦から九州勢同士で対決していた。
手の内を知る両者とあって――随所に駆け引きがある展開となる中で、初回から試合が動いた。
先行の福岡大大濠は2アウトからヒットで出塁した3番・山下恭吾が、4番・川上陸斗の2球目にスタート。二塁を陥れた。そして、川上は具志川商の先発・粟国陸斗の3球目をレフト前へ。先制点をたたき出した。
「相手投手は緩い変化球があるので盗塁できるのではないか。選手には、いつでも走れる準備をしておいてくれと。前半は積極的に仕掛けていこうとやっていた」
こう話したのは八木啓伸監督。狙いが的中したのだ。
九州大会で球の軌道を知られているからこそ
その裏、具志川商の攻撃。1番・大城勢武太は、福岡大大濠のエース・毛利海大が投じた初球のストレートをスイングし、俊足を飛ばして内野安打にした。続く、2番・島袋大地の初球。大城は盗塁を仕掛ける。だが、立ちはだかったのは、福岡大大濠の捕手・川上だった。
「仕掛けてくると思った。きたら絶対に刺してやろうと思っていた」
二塁までの送球スピードを上げるため、繰り返してきたフットワークの練習。理想通りの足の運びで盗塁を阻止し、チャンスの芽を摘んだ。九州大会で球の軌道を知られている毛利を先発に起用した八木監督は、その理由をこう明かした。
「機動力を使われると思っていたので、対戦したことのあるバッテリーの方が対応力がある」
ただ、具志川商が下を向くことはなかった。