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【プレミア初得点】「タキ、とにかく楽しめ」南野拓実を見捨てず…名将クロップの愛情が熱すぎる
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2020/12/21 11:40
プレミア初ゴールに雄叫びを挙げた南野拓実。ついにクロップ監督の期待に応えた
南野が試行錯誤を続けたこの1年間、温かい眼差しを向けながら、背中を押してきたのがクロップ監督だ。とにかく、このドイツ人指揮官は選手対応にブレがない。公の場で選手を批判するようなことは一切せず、持ち味を伸ばそうとひたすら尽力する。
初練習から熱血教師のようなアドバイス
南野がリバプールで初めてのトレーニングを終えた後も、「周りの選手が誰であるかなんて気にするな。ザルツブルクのときのようにプレーすればいい。君のやり方でプレーしてくれ。とにかく楽しめ」と、クロップは声をかけたという。
なにかと口うるさい英メディアに対しても、入団時から「タキには時間が必要だ。そうでなければおかしい」と言い続け、「報道陣は入団から3~4カ月で新加入選手の評価を求める傾向にあるが、わたしはそんな短期間で選手を見ていない」と釘を刺したこともあった。
クロップの言葉は、ときにリップサービスに聞こえることもあるが、選手から余計なプレッシャーを取り除こうとしているのは十分伝わってくる。イメージ的には、生徒思いの熱血教師だ。
コロナ禍、南野の自宅にケータリングを手配
さらに、今年はコロナ禍の影響も大きかった。南野がオーストリアから英国に渡ってきて3カ月も経たないうちに、ロックダウン(都市封鎖)がイングランドで施行された。在英19年の筆者もロックダウンの開始直後の3~4月は戸惑うことが多かった。
1月に正式加入したばかりの南野には、さらに苦労が多かったことだろう。日常生活だけでも支障が多いなか、南野の場合は、プロ選手として結果を求められる立場にもあったのだから。
ロックダウン解除後、53歳の指揮官は「(新型コロナウイルスの感染拡大で)タキは、我われ全員の人生の中で最も難しい時期にリバプールにやってきた。ロックダウンの中で、1人で暮らしていくとなれば、様々なことに対処しなければならない。大変だったと思うが、よくやってくれた。彼はスーパー・プロフェッショナルだ」と褒めていた。
言葉をかけるだけでなく、支援も忘れなかった。ドイツ人のクラブ栄養士モナ・ネマー氏の管理の下、ロックダウン中は南野の自宅にケータリングで食事を手配するなど、万全のサポートで支えた。
そんなクロップについて「彼はなにかと南野を気に留めている」と話すのは、英紙サンデー・タイムズでサッカー部門の主筆を務め、リバプールの内部事情にも詳しいジョナサン・ノースクロフト記者だ。