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【プレミア初得点】「タキ、とにかく楽しめ」南野拓実を見捨てず…名将クロップの愛情が熱すぎる
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2020/12/21 11:40
プレミア初ゴールに雄叫びを挙げた南野拓実。ついにクロップ監督の期待に応えた
攻→守の“ネガトラ”の急先鋒になった
特に前半のリバプールは、ボールを失った直後に敵に寄せて奪い返す「即時奪回」を徹底していたが、そのプレスの急先鋒に南野がいた。攻撃→守備のネガティブ・トランジション(切り替え)が素早く、それでいて運動量も豊富。試合終了までピッチを縦横無尽に走り回った。
試合後、そんな南野の出来について、うれしそうに語ったのがユルゲン・クロップ監督だった。
「タキ(南野の愛称)は今日、最高のゲームをしてくれた。ナイスなフィニッシュだったし、なにより調子がいい。先発に驚いていたかはわからないが、起用するのにふさわしい動きを練習から見せていた。だからこそ、彼を先発で起用した」
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もともとドイツ人指揮官は、インテンシティの高いディフェンスをこなしながら、オフザボールの動きで決定機に絡める南野の特性を高く評価している。この日の日本代表アタッカーは、まさに監督の期待通りのプレーを示した。
ジョタに序列で抜かれ、現地報道も懐疑的に
だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。とにかく、プレミア初ゴールまで非常に時間がかかった。世界王者リバプールの一員になったのは今年の1月1日。コロナ禍で3月から3カ月間の中断があったとはいえ、国内リーグ戦の初ゴールまで1年近くを要した。
今シーズンの10~11月には出場機会が激減した。夏の移籍期間に加わってゴールを量産しているポルトガル代表FWディオゴ・ジョタに序列で抜かれ、ベンチで試合終了のホイッスルを聞く試合が増えた。
久しぶりに出番があっても、試合勘の欠如からパフォーマンスが振るわないという悪循環に陥ったのも、ちょうどこの頃だ。国内リーグ13節まで無得点で、一部の英メディアから懐疑的な意見が出始めるなど、苦しい時を過ごした。
転機になったのは、けが人続出の非常事態で、本職ではないインサイドハーフとして先発したチャンピオンズリーグのミッティラン戦(現地時間12月9日)。ここで、今季リバプールの公式戦でチーム最多となる37回のプレスを記録して存在感を示し、今節のクリスタルパレス戦の先発につなげた。
ただ、イングランドの識者たちは、日本代表FWに多くを求めるのはまだ酷だと話す。