プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人が日本シリーズ「全試合DH」を受けた本当のワケ 周東佑京に“秘密兵器”を使うためだった!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/11/20 17:05
今季、13試合連続盗塁成功の世界記録を達成した周東。日本シリーズで、巨人はその快足を止められるか
DH制度導入で使える“秘密兵器”とは?
兼ねてからセ・リーグにもDH制度の導入を提唱する巨人の原辰徳監督だが、日本シリーズでは9人野球に慣れているセ・リーグのチームにとって指名打者制度が不利になるのは明白だ。しかしあえてそれをあっさり受け入れた。背景には、コロナ禍の中での試合ということ以外にも秘めたる狙いがあったのだ。
秘密兵器・岸田行倫捕手の存在である。
実はこんなデータがある。
捕手が投手の投球を受けて二塁に送球し、そのボールが二塁カバーの野手に到達するまでの時間を計ったポップタイムである。
あるセ・リーグのチームから入手したデータだ。
岸田は小林を上回る強肩
巨人の今季の主戦捕手の大城卓三捕手は最速タイムは1.77秒で、平均は1.97秒。炭谷銀次朗捕手は最速が1.8秒で平均タイムは1.94秒となっている。大城は最速タイムが速くポテンシャルはあるものの、それを平均的に出すことはできないということがこの数字からは読み取れる。
一方、今季はケガでほとんど出場機会がなかったが強肩の小林誠司捕手は、昨年のデータだが最速が1.85秒で平均値は1.93秒。もちろん3人の中では最も速いタイムを叩き出している。
ところが、だ。
それを上回るのが岸田だったのである。
今季は開幕直後の小林のケガによる戦線離脱で一軍に昇格。その後、小林の復帰で1度は二軍落ちしたが、10月18日に再び一軍に昇格すると、その後は若手の戸郷翔征投手や畠世周投手とコンビを組んで先発マスクをかぶり34試合に出場。チャンスに強い打撃と同時に守備もソツなくこなして、一気に首脳陣の評価を上げてきた選手だった。
そしてこの岸田の持ち味が、小林を上回る強肩なのである。