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“史上最強のホークス”を松中信彦と斉藤和巳が語る「甲子園の地鳴りと博多駅の激励」【内弁慶シリーズ】 

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/11/23 17:01

“史上最強のホークス”を松中信彦と斉藤和巳が語る「甲子園の地鳴りと博多駅の激励」【内弁慶シリーズ】<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「王監督の胴上げ、きれいなんですよね」当時の主砲とエースが最強ホークスを語る

淡々と野球をして流れが変わると思うなよ

 誰からも敬愛された“世界の王”は、ゼロから歩き始めたホークスのユニフォームに袖を通し、負けに負けた。ファンに生卵をぶつけられ、スタンドには「頼むから辞めてくれ」という横断幕が掲げられた。

 だが王は、どれだけ叩かれても歯を食いしばり、愚直に選手たちに説き続けた。

「流れを変えるのは、いいか? お前たち選手なんだ。淡々と野球をして流れが変わると思うなよ。野球の神様はいるんだ。だから自分で流れを変えるんだ」

 王の精神が一人ひとりに、そしてチーム全体に浸透して、ホークスは日本一になった。負け犬集団が常勝軍団になった。

こんなに胴上げが似合う監督、どこにもいません

 最強ホークス、その有終の美を飾ったのは王監督の胴上げだった。

 実直で一途な性格そのままに、優勝監督は頭から足の先までまっすぐ伸ばし、両手を大きく広げて、心地よさそうに福岡ドームに舞った。

 チームリーダーとして「監督を日本一にする」、「監督に恥をかかせちゃいけない」と自らに言い聞かせてきた松中にとって、それは夢に見た光景だった。

「王監督の胴上げ、きれいなんですよね。みんな大抵、丸くなっちゃうのにね」

 奇しくも斉藤も同じことをつぶやいた。

「ぼくはどの監督より、王監督の胴上げがいちばんきれいだと思う。こんなに胴上げが似合う監督、どこにもいませんよ。手が伸びているところがいいんですよね」

 最強ホークスの伝説、それは日本一美しい胴上げとともに語り継がれる。

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