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“史上最強のホークス”を松中信彦と斉藤和巳が語る「甲子園の地鳴りと博多駅の激励」【内弁慶シリーズ】
posted2020/11/23 17:01
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Hideki Sugiyama
「何年のホークスが最強だと思いますか?」
ダイエー時代からソフトバンク時代にかけ、ホークスの4番に君臨した松中信彦。7度のリーグ優勝に貢献した男は、ファンにこう尋ねられて迷うことはない。
「2003年です。ホークスひと筋19年プレーしましたが、この年が最強ですね」
この年のホークスは盤石だった。
打っては2割9分7厘と歴代最高のチーム打率を記録し、松中に城島健司、井口資仁、バルデスが、プロ野球史上初となる「100打点カルテット」に名を連ねた。投手陣も20勝3敗の斉藤和巳が軸となり、和田毅、杉内俊哉、新垣渚という「松坂世代トリオ」が台頭。このホークスと、1985年以来のリーグ制覇を果たした阪神タイガースが激突した日本シリーズは、第7戦までもつれ込む激闘となった。
タイガースファンの野次の嵐と不気味な大合唱に
地元・福岡で幸先よく2連勝を飾ったホークスは、意気揚々と敵地・甲子園に乗り込む。だが、まさかの3連敗を喫した。
彼らの行く手を阻んだもの、それは甲子園とタイガースファンだった。交流戦が始まる前だった当時、甲子園に立った松中は、その熱気に圧倒された。
「応援が始まって、正直ビビりました。“なんじゃこれは?”って気分ですよ。あの甲子園の大合唱は、いま思い出してもすごい。普通なら、ライトスタンドと三塁側では声がずれるじゃないですか。ところが甲子園は完全に一体化しているんです」
タイガースファンの野次の嵐と不気味な大合唱を浴び続けて、ホークスの野手は口々にこう言い合うようになった。
「早く福岡に帰ろう。勝って、さっさと福岡に帰ろう」