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「ついにメッシを破った」ジダンはなぜ監督として成功できたのか バルダーノら10人の証言
text by
フレデリック・エルメル&フローラン・トルシュFrederic Hermel et Florent Torchut
photograph byFranck Faugère/L’Équipe
posted2020/09/20 11:50
選手として輝かしい成績を残したジダン。彼を良く知る10人が語る「監督・ジダン」とはーー。
ペドロ・コストロルテガ「監督以上の存在」
「監督ジダンは選手ジダンと同様に、あらゆるアーティストにとって造形の対象だ。私が彼を描くとしたら、ベンチの前に立つ彼の姿を描く。落ち着き払って頭を高く掲げた彼の姿を。彼は自ら率いるチームのプレーを超然とした高みから見つめている。芸術にはどこか魔術的な要素があり、ジダンはまさにそんな存在だといえる。2002年のCL決勝で決めたボレーシュートなどは、そんなシーンのひとつだったと今も思っている。
そしてその魔術を、彼は今、監督としてチームに伝えようとしている。監督以上の存在であり、シンプルなボディランゲージは選手たちに大きな安心感を与えている」
マリリナ・ディアス「レアルのために生まれた」
1987年以来のレアル・マドリーのソシオ
「彼はレアルという船のまさに船首だわ。クラブの象徴であり、真の所有者であるソシオを彼が代表している。選手のときも監督になってからも、彼は変わることなくレアルの伝統にしっかりと足跡を刻んでいる。まさにレアルのために生まれ、レアルととともに生きることを運命づけられたと私には思える。彼が達成した様々な勝利は、彼がレアルのDNAの一部であるからこそ成し遂げられた。誰もジズーのように、魔術と才能であれだけのタイトルを獲得できない。
もちろんジズーにも、人知れぬ努力があったのはわかっている。そのために陰でどれだけ献身してきたかも私には理解できる。そうしたことを彼は決して表に出そうとはしないし、獲得したメダルがタキシードに隠れている。常に選手を前面に出して、使命達成に要した努力とそこに至る経緯を声高に話したりしない。そうした慎み深さがあるから、彼はレアル・マドリーでこれだけうまくやっていける」
メルチョル・ルイス「ロッカールームの理想的な監督だ」
カデナ・コペ(スペインのラジオ局)解説者
「ジズーの頭上には星が輝いている。選手時代も監督になってからも、彼のサッカーは輝きに満ちている。2つを分けられないのは、彼が選手として生き、感じ、学んだことを監督として表現しているからだ。彼は学校出の監督ではない。もちろん修行の時代はあったが、学業によって形成された監督ではない。ベースになっているのは彼自身の経験であり感覚だ。
すべてを経験しているから、それは決して驚くに当たらない。どんな大会にも落ち着いて臨めるのは、彼自身がそこですでに戦っているからだ。ロッカールームで何が起こるか分かっているから、選手も彼をだませない。ジズーも選手を裏切らず、真実のみを彼らに語りかける。すべてのエゴを威厳と知性でコントロールできる彼は、ロッカールームの理想的な監督だ。だが、忘れてならないのは、彼が最初にレアルの監督に就任して以来、とても大きな進化を遂げていることだ」