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「無残な負け。もうダメ」なでしこ谷川萌々子30m弾にガク然も…銀メダルで“手のひら返し”ブラジル女子サッカー暗黒史「約40年も禁止令が」
posted2024/08/14 11:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Mutsu Kawamori
昨年のワールドカップ(W杯)ではグループステージ(GS)3位で、ベスト16にも残れなかった。その後、監督を交代させてチームを作り直したが、大会前の世界ランキングは9位。スペイン、フランス、ドイツ、アメリカ、日本、カナダより下とあって、母国でもほとんど期待されていなかった。
はたして、GSではスペインと日本に敗れて3位。総合8位で、辛うじてベスト8へ進んだ。ところが、準々決勝で開催国フランスを、準決勝で昨年のW杯覇者スペインを倒すと、決勝でも超大国アメリカと互角に渡り合った――。
日本に無残な逆転負け…もうダメだと
パリ五輪で、ブラジル女子は地獄から天国へ這い上がった。これに伴って、母国メディアの評価もジェットコースターのように上下動した。
「信じがたいミスの連続! 断じて容認できない!」
日本戦で先制しながら後半アディショナルタイムに熊谷紗希のPK、そして谷川萌々子に――ブラジル人記者チアゴ・ボンテンポ氏が“魔法のようだ”と評した――30mのロングシュートを決められ、まさかの大逆転負けを喫した際にはこれだけの厳しい論調が起きた。
しかし……。
「不屈の闘志と驚異的な頑張り! 準々決勝に続き、準決勝でも奇跡を起こした!」
開催国フランスを1-0で下すと、世界王者スペインも4-2と圧倒して決勝に進出すると大騒ぎに。テレビの女性解説者は、「日本に無残な負け方をしたときは、これはもうダメだと観念したわ。それが、準々決勝以降、素晴らしい試合を続けてついに決勝まで――まるで夢のよう」と嗚咽しながら言葉を絞り出した。
「英雄的な戦いぶり!不運な判定がありながら、アメリカを瀬戸際まで追い詰めた!」
決勝のアメリカ戦で前半は優勢だったが、後半に失点して惜敗。銀メダルに終わっても、健闘を称える言葉が並んだ。
いずれも、パリ五輪のブラジル女子代表の試合を中継したブラジルのテレビのアナウンサーの言葉である。
わずか2週間で評価が“手のひら返し”に
スポーツでは明白な結果が出る。そして、スポーツメディアは結果によって簡単に手のひらを返す。しかし、わずか2週間でメディアと国民の評価がこれほど大きく変わったチームは稀だろう。