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堂安律加入ビーレフェルトは“不屈のアンダードッグ” 負債35億円、破産寸前からブンデス1部 

posted2020/09/19 11:50

 
堂安律加入ビーレフェルトは“不屈のアンダードッグ” 負債35億円、破産寸前からブンデス1部 <Number Web> photograph by Getty Images

ブンデス1部の舞台に臨む堂安律とビーレフェルト。アンダードッグとしての意地を見せられるか

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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 堂安律がレンタル移籍したブンデスリーガのビーレフェルトは伝統的なクラブだ。

 もちろん、何をもって伝統的というかは人それぞれで、それこそ「かつてはブンデスリーガに所属していた」という名声だけで“古豪”という立ち位置に収まってしまうクラブも少なくはない。

 そんな中でビーレフェルトは1つの記録を持っている。1部リーグへの昇格回数がトップの8回なのだ(ニュルンベルクと並んでのタイ記録)。

 昇格回数が多いということは、降格回数が多いということでもある。降格は経営を圧迫し、人件費の大幅な削減を余儀なくされる。そして立ち位置が定まらない中、クラブとしてのバランスを崩したまま走り続けると、そのままどんどん下り坂を駆け下りていくことにもなりかねない。ビーレフェルトにもそうした苦難の時期はあった。

負債35億円、一時は破産寸前の状況

 2000年代こそ1部リーグの常連だったが、08-09シーズンに2部へ降格すると、その後は2部と3部を行ったりきたり。特に2部リーグで迎えた17年には2900万ユーロ(約35億円相当)の負債を抱えるという、これ以上ない危険な状況まで追い込まれてしまっていた。

 もはや破産もやむなしとされるほど厳しい局面を迎えたが、ここでクラブは息を吹き返すことに成功する。

 かつてドルトムントのマーケット部でも敏腕をふるっていたマルクス・レジェックが、「オストベストファーレン(ビーレフェルトのある地域)のきずなのために」というプロジェクトを立ち上げて地元企業に共同基金をつのると、地元クラブの危機に数多くの賛同者が立ち上がった。

 なんと、わずか1年の間に2000万ユーロ以上の負債を返すことができたという。

 レジェックは「1つの奇跡だ」と振り返っていたが、地元との結びつきを大事にしてきたクラブのあり方があったからこそ、何度も苦しい状況から這い上がってくることができたのかもしれない。8度の1部リーグ昇格という記録は、クラブと地域と人々の思いがいつでも密につながっていることの証でもある。

【次ページ】 昇格の立役者は60歳ノイハウス監督

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