炎の一筆入魂BACK NUMBER
初サヨナラ打で涙のカープ上本崇司。
「こんなに試合に出るのは初めて」
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/09/01 11:40
上本は2013年にドラフト3位で入団。両打ちに取り組んだ時期もあったが、現在は右打席に専念している。
あの日の涙の意味とは。
そんな姿は、周りも見ている。先輩からは励ましの言葉や助言をもらい、慕ってくれる後輩からも癒しだけでなく、アドバイスをもらった。そして今年、首脳陣からは“起用”という無言の期待をかけられている。
「周りの人に支えられている。“切り替えていけよ”とか“思い切っていけ”とかめちゃくちゃ声をかけてくれる。選手だけじゃなく、首脳陣も、裏方さんも声をかけてくれる」
中堅方向へ上がった白球が青い芝をはねたとき、上本のすぐ後ろには笑顔で追いかけてくるチームメートの笑顔があった。歓喜の輪はいつもより大きく、長く感じられたのは気のせいではないだろう。
背負ってきたのは重圧や悔恨の情だけでなく、ともに戦う人たちの言葉や笑顔もある。あの日の涙には、ミスを取り返せた安堵感だけでなく、チームの勝利に貢献できた喜び、仲間への感謝も詰まっていた。