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レバンドフスキ、ノイアー達の献身。
バイエルンの凄みと監督のビデオ。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/31 11:50
CL優勝メダルとともに満面の笑みのレバンドフスキ。当代ナンバーワンのセンターフォワードであることを証明した。
絶妙なポストプレーからの得点。
パリSG戦の決勝点は、ミュラーの素晴らしいポストプレーが絶妙な味付けをしていた。チアゴのパスからボールを受けたキミッヒが、右サイドのニャブリに展開して素早くゴール前にクロスを送る。
そこに走り込んだミュラーが柔らかいボールタッチでキミッヒへと落とす。そこからのクロスをファーサイドでフリーとなっていたコマンがヘディングで押し込んだのだ。
チアゴのゲームメークも一流だった。
決勝点の味付けをしたのがミュラーなら、起点を作ったのがチアゴだ。
チアゴは準決勝で幾つかのミスパスで大ピンチの要因を作ってしまった。また中盤に大きなスペースを空けてしまい、何度もそこをかいくぐられてしまった。決勝では少しミスがそのまま敗戦につながる。安定感を求めて、チアゴが外されるのではという予想はドイツメディアでもされていた。
だが、この日のチアゴはすべてが一流だった。
激しいプレスを冷静にいなして、パスを展開。さらに守備でも鬼気迫る働きを見せた。汚れ仕事を厭わず、激しいチャージで何度もボールを奪取する。ビルドアップ時から次の展開に備えたポジショニングし、決してスペースを空けないように注意しながら、ゲームをコントロールしていた。
決勝点の場面では、パリSGの守備がほんの少し緩んだ瞬間を見逃さなかった。ボールを保持するチアゴへのプレスが一瞬遅れた隙を縫って、キミッヒへ縦パスを送った。それまではパリSGの守備に手を焼き、中央へ侵入できずに苦しんでいたバイエルンが、ようやく作り出した風穴だった。
「ビッグゲームになるとチアゴは消える」
そんなことを言われた時代もあった。だが、チアゴは自らのプレーで偉大さを示したのだ。